トライアル、Amazonも開発 スマートショッピングカートがもたらす、真の顧客価値とは?:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)
スーパーのショッピングカートにタブレット端末が搭載された「タブレットカート」を導入する店舗が国内外でじわじわと増えている。九州に本拠を置くスーパー、トライアルの「スマートショッピングカート」や、AmazonのAIレジカート「Amazon Dash Cart」。それぞれ、どのような特徴があるのか。
商品を放り込むだけで購買完了する「Amazon Dash Cart」
筆者はコロナ禍中の2020年7月に発表されたAmazonのAIレジカート「Amazon Dash Cart」を22年に米シアトルで実際に体験しました。
Amazon Dash Cartは、来店客が自身で商品をスキャンし、迅速にチェックアウトできるScan&Go型のサービスです。このカートには以下の3つの特徴があります。
1) バーコードスキャナー:カゴの中の4方向に設置されたカメラによりバーコードを読み取ることができ、バーコードの向きを気にせずに商品をカゴに入れることができる
2) 画像認識による商品判別:カメラには画像認識機能が備わっており、バーコードが読み取れなかった場合にも画像識別AIにより商品が登録できる
3) 重量センサー:高精度の重量センサーが搭載されており、重量で価格が決まる商品を正確に測定できる
Amazon Dash Cartは、Amazonアプリの自分の買い物用二次元コードをスキャンして利用します。アプリに登録されたクレジットカードで決済するため、レジでの作業や店員によるチェック作業は存在せず、専用レーンを通ってそのまま帰ることができます。
トライアル同様に、買い物カゴではなくカートを使用することで、客単価が増加する可能性があります。また、Amazonアプリの買い物メモやネットも含めた購入履歴とも連動しており、オムニチャネルでパーソナライズされた販促を行うことができます。
マイバッグをカートに入れておけば、荷物の入れ替えが不要になり、すぐに持ち帰ることが可能です。店側にとっては荷づくり作業台のスペースが不要になるメリットがあります。
Amazonアプリからコードを表示してカートでスキャンする仕組みにより、不正利用を抑制することが可能です。不正利用をした場合、ネット通販でも利用するAmazonのアカウントを停止できることが抑止効果を生んでいます。
仕組み自体はAmazonが最も優れたものを作り上げていると筆者は考えます。バーコードの位置を意識せずに欲しい商品をカートに放り込むだけで購買が完了する顧客体験は他では味わえないものです。
弱点としては、ハードが高額であることと、かなり重いということがあります。現在はセンサー類を絞り込んで軽量化した第2世代になっています。
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