なぜ、大阪王将“ナメクジ騒動”告発者は逮捕された? 意外と知らない「公益通報」のあれこれ:働き方の「今」を知る(4/4 ページ)
「大阪王将」のフランチャイズ店でのナメクジの発生などの不衛生な状態を告発した元従業員が、フランチャイジーであるファイブエム商事の被害届により威力業務妨害の疑いで逮捕された。本件を概要だけ聞いて「企業に問題があっても、訴えられる可能性があるなら内部告発なんてできない」「たとえ内部告発されても、告発者を訴えればいいのか」などと判断するのは早計だ。本記事では、今後類似の騒動が発生しないために、時系列で何が起きたか、そして何が問題だったのかを解説する。
企業はどう対処していけばよいのか
先述の通り、22年6月1日から改正公益通報者保護法が施行されており、アルバイトや派遣社員も含んだ常勤労働者数が300人を超える事業者には、内部通報窓口を設置し、通報された問題に対して迅速かつ適切に対応することが義務付けられている。
もちろん、通報者や相談者に不利益な取扱いをすることは禁じられており、通報窓口担当者には情報の守秘義務が課せられている。
今のところ、常勤従業員数300人未満の事業者は努力義務に留まっているものの、企業規模や従業員数にかかわらず、内部通報制度を整備せず、通報に対して適切に対応できない場合、消費者庁による行政措置(報告徴収、助言、指導、勧告)の対象となり、企業名が公表されることもある。
本来であれば内部で早期解決できたはずの問題が、SNSで暴露されたり、後になって行政処分が下されたりすることになれば、企業の信用と評判を大きくおとしめることにもなりかねないだろう。
大阪王将のケースも、もし社内で内部通報窓口が設置され、通報に対して適切に対処できていれば、フランチャイズ契約解除、店舗閉鎖、刑事事件に至るような騒動にも至らなかったかもしれない。
各社は本件を他山の石とし、内部通報制度を積極的に活用すべきだろう。不正や不祥事を早期に発見し、是正できれば、企業と従業員を守ることにつながるはずだ。
著者プロフィール・新田龍(にったりょう)
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。
11月22日に新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)発売。
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