生成AI×不動産の可能性とは? 「物件画像」の作成と課題から考える:不動産DXのいまを知る(2/2 ページ)
消費者に居住イメージを届けるホームステージング画像。画像生成AIで生成することはできるが、多くの課題も。課題解消へアットホームが取り組んでいる研究とは――。
課題を解消する方法は?
現在、アットホームでは画像生成AIを活用したホームステージング画像の研究(特許出願中)を進めています。本研究はアットホームラボと東京大学大学院情報理工学系研究科 の山崎俊彦教授との共同研究です。
前述の課題を解消すべく、実際の部屋の間取りや設備を保持した状態で家具の配置ができるか試みました。
その結果、画像生成AIである「Stable Diffusion」に家具配置をしやすくするファインチューニングモデル(家具配置LoCon)と、間取り保持をしやすくするネットワーク(間取り保持ControlNet)を作成し組み合わせることで実現できています。
また、さまざまなファインチューニングモデルを組み合わせることで、各部屋のスタイルに合ったホームステージング画像も可能になります。
基本的な画像生成の3手法であるText2Image、Image2Image、Inpaintingの全てにおいて、部屋の間取りや設備などを保持したまま家具を配置することに成功しましたが、画像ごとに最適なパラメータが変わり、Inpaintingだとマスクを手動で作成する必要があります。そのため、今後は自動で最適なパラメータやマスクを設定するシステムの研究を進めていきます。
生成AI活用で不動産業界はどう変わる?
実際に住む部屋を決めるには、入居後のイメージを想像できるかが大事な判断材料となります。画像生成AIを活用するバーチャルなホームステージング画像が波及した場合、インテリアコーディネーターなどの知識やセンスがなくとも作成できるようになります。さらに、従業員が誰でも利用できる点から、不動産会社が抱える人員不足の解消や業務効率化につながると考えられます。
現状のホームステージング画像はコストと制作期間が課題として挙がっています。画像生成AIにより、安価で早く作成できるようになれば、ホームステージング画像が公開された物件が増えることはもちろんのこと、1つの物件に対して複数のイメージでホームステージング画像を公開できるほか、部屋を探している消費者の好み、生活スタイルに合ったホームステージング画像提供も可能になるでしょう。
今回紹介したホームステージング画像に限らず、物件画像の領域に生成AIを導入することで、より効果的な画像生成の実現が期待できるのです。
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