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「ギャルのお悩み相談」も パーソルが社内GPTの“プロンプト掲示板”を作ったら、何が起きたのか(2/2 ページ)

言葉が思い出せないときには「あれ、あれ、あれだよあの単語」。誰かに悩みを聞いてほしいときには、ギャルが明るく解決してくれる「悩みへの認知行動療法的アドバイスbyギャル」。パーソルグループの社内GPTでシェアされている、生成AIへの指示文(プロンプト)だ。プロンプトをシェアし合うことで起きた「思わぬ効果」とは?

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目指したのは、学びを周囲にシェアできるカルチャーの醸成

 投稿のハードルを上げないようにと、投稿前に審査は設けていない。自由な活用を喜ぶ朝比奈氏は、仕掛け人として驚いていることがあるという。

 「当社グループの社員は、基本的に真面目。例えば良い資料があるときに『グループ内でぜひ展開してください』と言っても、『上司の許可を得なくては』『同じグループの中でもビジネスが違うから、不都合があってはいけない』と断られてしまうような雰囲気でした。

 生成AIに限らず、テクノロジー活用を進めていくためにはそうしたスタンスではだめ。学びを周囲にシェアし、シェアをすることでさらに学びを深めていくようなカルチャーに変えていくため、プロンプトギャラリーを作りました」

 同社が社内GPTの社内展開を完了させたのは2023年10月のこと。同年2月頃に朝比奈氏が個人的に利用して衝撃を受け、「グループの中で絶対に進めないとまずい」と思い、エンジニアにプロトタイプの作成を指示した。約2週間で仕上げ、5月には役員に対して活用を推進していくことを宣言した。

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CHASSUのWeb版利用画面。Teams版も提供している(画像はパーソル提供)
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イメージキャラクターも用意した(画像はパーソル提供)

 内製化を決めた当初から、プロンプトギャラリーのアイデアはあったというが、利用のハードルを下げる試みは、これだけにとどまらない。2023年度には、入門者、初心者、中級者、エンジニア……と複数のレベルに応じた1時間程度の研修やイベントを実施。そもそも生成AIやChatGPTとは何かを学ぶところから、業務活用と、それにとどまらず知見を周囲に共有できる状態までを目指すロードマップを設計した。

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2023年の生成AI学習MAP(画像はパーソル提供)

 受け身の姿勢にとどまらない積極的な活用のために、大会形式のイベントも実施。「AI Prompt Cup 2023」では、プロンプトの書き方と、その成果物を研修の受講者がシェアし、特に活用したいものを表彰する仕組みを取った。

 「(プロンプトカップを)企画したのは、ITのバックグラウンドもなければ社会人歴も浅い若手が中心。『自分たちと一緒に学び、マスターしよう』と、テクノロジー活用にこれまで積極的ではなかった人たちも入りやすい雰囲気を作っていきました」(朝比奈氏)

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朝比奈氏(後段、右から2番目)と、生成AI導入プロジェクトに参画したメンバー

現場で独自の活用を 「小さなAI」を準備

 このようにして、グループ内での活用を促進しているパーソルグループ。生成AIの活用に当たっては大きく3つの領域を設け、それぞれで施策を展開している。

 まずは、グループの事業変革に向けた領域だ。経営レベルで取り組むものとしており、ディスカッションを重ね「これからトライしていく」(朝比奈氏)。

 2つ目は、グループ内の各社の事業における活用だ。例えば、パーソルキャリアが提供する人材紹介サービス「doda」では、2024年4月に求職者の職務経歴書作成を助ける、職務内容の自動生成機能を搭載した。また5月にはパーソルプロセス&テクノロジーがコンタクトセンター向けに、生成AI活用などによる業務効率化を支援する「デジタルコンタクトセンター構築サービス」の提供を始めた。

 3つ目が、グループ全体で利用を促進していくための取り組みだ。朝比奈氏の指揮のもと、パーソルホールディングスが主導して進めており、CHASSUの開発や研修、イベントなどはこれに当たる。

 人材サービスを中心に展開するパーソルグループだが、その業態は各社で異なる。ホールディングスが中心となり、使い方をトップダウンで伝えるような方式はそぐわない。各社・各部門が独自の活用を進められるような基盤作りを意識して進めている。その一つが、「小さなAI」の取り組みだ。

 「OpenAIはChatGPTの機能として、GPTをカスタマイズできる『GPTs』を提供しています。こうしたイメージでわれわれも基盤を作り、(グループ各社の現場で)“小さなAI”を作れるようにしています。

 これまで、人事や経費精算のルールをAIのチャットbotに読み込ませるには、全ての振る舞いを設定する必要があり大変でしたが、生成AIの登場でかなりハードルが下がりました。既存のドキュメントを読み込ませてプロンプトを設定すると、(各現場の業務やルールに)特化した小さなAIをローコードで作れます。

 こうした基盤を用意しておけば、例えば営業が利用するアプリケーションの上に、そのアプリケーションにだけ必要なチャットbotを呼び出せるようにできます。専門家ではなくても簡単にAIを作れるよう仕掛けた上で、活用を促進する取り組みを進めています」(朝比奈氏)

 親しみやすい仕掛けを用意しながら、生成AIの活用促進を進める同社。背景には、グループの中心である人材業が労働集約型であることへの懸念がある。今後は社内活用と、提供するサービスなどへの組み込みのいずれもを進めていく意向だ。

 「テクノロジーの力を使って社内の工数を減らし、もっと顧客に向き合う時間を増やす取り組みを、グループ内の各所で準備しています。昨年度から事業への活用も仕込んであるので、今年はさまざまな発表ができると思います」(朝比奈氏)

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