陳列棚で商品にカギ……米小売大手が実践、顧客をいらだたせない盗難防止策とは?:Retail Dive(2/2 ページ)
米国では盗難防止のため、日用品がガラス越しに施錠される光景が広がっている。購入するためにスタッフの助けが必要となり、顧客体験を犠牲にする。どうすれば盗難を防ぎつつ、顧客体験を守ることができるのか。
CXを犠牲にしないHome Depotの取り組み
多くの小売店では、すでに防犯カメラが設置されている。AIに訓練されたコンピューターが物や人を識別・追跡する(コンピューター・ビジョン)ことで、人間よりも効果的に不審な行動を検知することができる。
AIを用いた盗難防止ソリューションは、買い物客がカートに商品を隠すなど、一般的に盗難に関連する行動を検知し、必要に応じてスタッフに通知することができる、とエルヴァーストン氏は言う。これにより、善良な買い物客の購入体験に影響を与えることなく、犯罪を抑止することができる。
ホームセンター最大手の米Home Depot(ホーム・デポ)は、このアプローチをセルフレジの列に取り入れている。Home Depotはこのコンピューター・ビジョンのシステムを使って、高額商品や複雑な組み合わせの商品が入ったショッピング・カートの中身を識別していると、5月の決算説明会で幹部が語っている。
一度トリガーが作動すると、Home Depotのシステムは、スタッフを読んで買い物客をサポートし、全ての商品がスキャンされているか確認する。説明されたことを確認するために、他の従業員を呼び出す。これにより、善良な買い物客はより早くチェックアウトできると同時に、窃盗予備軍を阻止することも可能になると幹部は説明する。
コンピュータ・ビジョンは、他にも顧客体験のメリットをもたらすとエルヴァーストン氏は話す。カメラは窃盗犯を監視するだけでなく、買い物客ががつまずいて転倒する前に、こぼれた液体やその他の危険性を指摘することもできる。
AIによる監視カメラのコストが下がれば、より魅力的なものになるかもしれない。盗難を減らすことで浮いたお金は、ネットワークの導入コストを相殺することができる。
「給料を払うよりも安価で、言いにくいが(人間のように)休むこともない」とエルヴァーストン氏は言う。「Facebookを更新することも、メールを送ることもない。24時間、常にターゲットを監視しているのだ」
ただし、AIは完全に人間の手の代替になるものではない。小売業者によって、労働者とテクノロジーの活用のバランスは異なる。例えば、数店舗しかない小規模な企業では、追加の労働力をまかなう方がコスト低下につながるかもしれない。このようなアプローチは、地元に密着し、顧客を熟知した従業員による人間中心の顧客体験をサポートするものでもある、とエルヴァーストン氏は言う。
一方、大企業はAI搭載カメラに重点を置く戦略を好むだろう。何千もの店舗を持つ小売チェーンは、人件費に相応の金額を費やす必要があり、一括で購入したハードウェアへの投資がより魅力的になる、とエルヴァーストン氏は述べている。
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