DeNAを支える第2の柱「Pococha」 急成長の背景にある、徹底したユーザー理解(2/2 ページ)
DeNAが提供するライブコミュニケーションアプリ「Pococha」が、同社の収益の柱になりそうだ。急成長の背景には、同サービスが長年ユーザー視点に立ったアプリ運営を強化してきたことがある。Pocochaはこれまでに、どのようなユーザー体験のアップデートを重ねてきたのだろうか。
みんなでピザパ? 「リアルタイム」の可能性
ユーザー状態を起点にしたコミュニケーション設計に加え、同社は今「リアルタイムコミュニケーション」にも注力している。
3月には、同社が製作協力をしたドラマ『これから配信はじめます』(テレビ東京)と連動した施策を実施した。
放映時間に合わせてPococha内でドラマの告知を配信。その告知にアクションをした人はドラマを視聴した可能性が高いと仮定し、それらのユーザーに対してのみ、放映終了後のタイミングでXに感想の投稿を促すメッセージを送付した。その結果、毎週ドラマ放映後にX上のトレンドに掲載される程の投稿量が集まったという。
「実際にユーザーの行動を変える結果につながったのは、リアルタイムのコミュニケーションが持つ効果だ。(今回のドラマ放映のように)何かしらの要因でユーザーの行動が変わりやすいタイミングに、リアルタイムでコミュニケーションを取れれば、求めているユーザー行動につながりやすいアプローチができると考えている」
同社はほかにも、ドミノ・ピザ ジャパンとのコラボ施策も展開。Pococha内でドミノ・ピザのクーポンを配布し、配信枠内でライバーとリスナーみんなでピザパーティーをするイベントを実施した。
「今後も継続的に、リアルタイム性を掛け合わせてより良い効果が出る施策を展開していきたい」
ユーザー体験の改善に終わりはない
このようにPocochaでは日々「ユーザー視点」を重視し、体験設計のアップデートに励んできた。大西さんは「顧客理解は、Pocochaがとても注力している部分だ」と話す。
毎月サービス外で定量調査を実施するほか、ユーザーアンケートやインタビューもかなりの頻度で実施し、ユーザーの声を反映したアップデートを日々実施する。例えば、現状のUX/UIは分かりやすいかインタビューをして、アップデート方針を検討。サムネイルの表示方法や大きさなど、細かく調整をしている。
これらの調査をマーケティング組織だけでなく、関連する各チームと連携して実施することで、プロダクト改善だけでなく、コミュニケーションの改善にも迅速に取り組めているという。
他にも、Pocochaの新機能や新しい規格の説明をする「ポコフォーラム」というオンラインイベントを実施。ユーザーから質問やフィードバックを直接聞いたり、課題や悩みに答えたり、密にコミュニケーションを取る。
ユーザーの声をアプリ運営に反映し、ユーザーにとって本当に使いやすい状態を追求しているPocochaだが、大西さんは「まだまだ課題だらけだ」と話す。
「何か一つを改善すれば全てが良くなるわけではないし、自分たちが良いと思っている状態がベストだとも限らないからこそ、ユーザーの声を聞いて改善を重ねていく」
直近の課題は、初めて利用するユーザーにとって利用しやすい体験設計を実現すること。現状の会員登録における導線やサービスの説明がベストなのか、いま一度見直していくという。
サービスを使い倒している作り手側では、まだサービスに慣れていないユーザーが困っている点、迷っている点になかなか気付けないこともある。サービスを知り尽くしているからこそ、本来の顧客理解、ユーザー理解から遠ざかってしまうケースは多いものだ。
だからこそ、Pocochaはユーザーの生の声を聞く機会を重視する。
「最近もユーザーの声を聞ける機会があったのだが、課題だらけだと実感した。これはすごくいいことだ。まだまだ改善すべき点はたくさんある」
「ベストだと思えるアップデートを続けても、きっとユーザー体験の改善に終わりはないのだと思う。今日よりも明日、ユーザーにいい状態のサービスを提供し続けたい」
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