生成AIを“あえて使わない”メリットとは？ 人間の思考プロセスに着目した不動産DX：不動産DXのいまを知る（2/2 ページ）

連載第5回は、ChatGPTなどの生成AIをあえて使用せず、実用性と効果を優先した不動産DX事例を紹介する。

[大武義隆（アットホームラボ代表取締役社長），ITmedia]

あえてAIを活用しないメリットとは

　物件情報の整理は、不動産ポータルサイト上だけでなく、実際に来店した消費者へ物件提案する際にも活用できるため、不動産業務支援にもつながります。

　従来は営業担当者が一件一件の物件について詳細な説明を行う必要がありましたが、本サービスを活用することで、その手間を大幅に削減できます。物件提案の担当者は、データには表れない物件のリアルを伝えたり、対面でなければ難しい消費者の要望を聞き取るなど、人間でなければ難しい業務に集中することができるため、全体の業務効率の向上にも寄与します。

　このサービスには、大規模言語モデル（LLM）のようないわゆる生成系AIを使用していません。LLMを用いた自動生成文は、ハルシネーション（幻覚）と呼ばれる虚偽情報が文章に巧妙に紛れこむリスクがあり、正確な情報提供が難しいためです。そのため、事前に作成されたフレーズ群と、精緻に管理されたルールベースのプログラムを使用することで、ユーザーが安心して利用できるサービスを提供しています。このアプローチにより、情報の信頼性を確保し、不動産会社も安心して消費者に対して説明できます。

　今回は不動産DXの一例として、物件選びのプロセスを革新し、業務効率化と顧客満足度の向上を実現するサービスを紹介しました。本サービスは、不動産業界だけでなく、他の多くの業界にも応用可能です。

　情報過多により比較が必要なあらゆるシーンで、このようなツールが利用されることで、ビジネスの効率化と顧客満足度の向上が図られるでしょう。今後もこのような技術革新が進むことで、さらなる業界の発展が期待できます。