ChatGPTに重要な情報を送っても安全か? 自治体のネットワーク分離モデルから考える(2/2 ページ)
自治体における生成AIの利活用、今回は「送信された情報の管理の問題」、つまり「ChatGPTに重要な情報を送信しても安全なのか?」という点について考えたい。
ChatGPTを職員の端末からシームレスに使いたい
ChatGPTの利活用を検討していくと、いくつかの課題が見えてきます。
- 自治体によっては、インターネットに接続できる端末が限られているため、ChatGPTなどの外部サービスを気軽に使えない
- 業務効率を高めるために、日常的な作業の中でシームレスにChatGPTを利用したい。例えば、作成中の文書をそのままChatGPTに入力し、回答をもらいたい
- 実務に即した利活用のために、機密性レベル2の情報も扱えるようにしたい
これらを解決するために、レベル2ネットワークにある職員の端末からシームレスにChatGPTを使う方法を考えてみましょう。
総務省では「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改定作業が進められており、新たなネットワーク分離モデルとして「α’(アルファ・ダッシュ)型モデル」というものが検討されています。
これは、レベル2ネットワークから直接インターネット上の外部サービスを利用するために、いくつかの条件を満たした上で、その接続を認めていこうというものです。現時点で、満たすべき条件はいくつか挙げられていて、
(1)外部サービスとの間で安全な通信経路を保つこと。外部からの侵入を防ぐこと
(2)接続する外部サービスを限定すること
(3)外部からファイルをダウンロードする際には、無害化処理を行うこと
(4)接続する外部サービスは、ISMAP等の外部認証を受けたサービスとすること
となっています。
当社では、この条件の(1)から(3)までを満たす「サニタイザーAIゲートウェイ」という製品を開発しており、すでにいくつかの自治体に導入を進めています。外部サービスとの通信を中継するゲートウェイサーバと、専用ブラウザ、ファイル無害化エンジンで構成されています。これにより、職員が普段使用する端末でChatGPT専用のブラウザを起動しておき、ChatGPTをシームレスに使えるようになりました。
また、OpenAI社のWebサイトでは、ChatGPTなど自社のサービスについて、外部監査や認証を受けている旨を公開しています。ISMAPなど国内の認証ではありませんが、EUのGDPR、米カリフォルニア州のCCPAの認証を受けていることで、ひとまず信頼できる外部サービスと考えてよいのではないかと思います。
これらの対策を講じることで、α’モデルによる接続を通じてChatGPTをレベル2ネットワークと同等の安全性を持つものとして扱うことが可能となります。その結果、機密性レベル2までの情報をChatGPTで取り扱えるようになります。
さらにOpenAI社からの約款やプライバシーポリシーを見てみましょう。約款はいくつかありますが、業務で使用する場合に重要なのは次の2つです。
これらを簡単に表現すると「ChatGPTは自らのサービス改善のためにデータを利用することがある(利用者側でそれを拒否することはできる)。しかし、個人を特定する情報は利用者の同意なしには共有されない」と解釈することができます。
したがって、自治体でChatGPTを利用するのならば、
- α’モデルでの接続、利用により、ChatGPTをレベル2ネットワーク相当とする
- ChatGPT利用における、情報セキュリティポリシーに基づく実施手順を作成し、順守させる
- ChatGPT内で「サービス改善のためのデータ利用を拒否する」設定を行い、入力した情報をChatGPTに取り込ませない
という組み合わせがよいのではないかと思います。
次回は、3番目の論点である「生成された文章に対する評価者側の問題:AIが生成した文章だからダメという理屈は通用するのか」について考えてみましょう。
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