「勝てるオープンイノベーション」を作るには? 金融領域がアツい理由は「深層心理」にあり:データが生み出す新ビジネス(1)(3/3 ページ)
厳しい環境でも自社を成長させるため、「勝てるオープンイノベーション」を作りたい――そんなとき、どうしたらいいのか? 新規事業戦略の考え方や、その中でも筆者が金融事業に注目する理由について解説する。
データは新たなビジネスの「土壌」
この理論を実践に移す具体的な例として、当社の事例を紹介します。
保険商品のバックエンドのシステム開発や運用支援などを担っている当社では、当社と同じソフトバンクのグループ企業が運営するキャッシュレス決済サービス「PayPay」やポータルサイト「Yahoo! JAPAN」をプラットフォームとした保険商品の提供を支援しています。
これらのプラットフォームでは、保険などの金融商品を提供することでユーザーのデータを収集し、そのデータ分析を基にマーケティングや、さらに良いサービスの検討につなげています。
「PayPay」や「Yahoo! JAPAN」のように、金融商品を有効活用することで、自社の強みを生かしたビジネス展開が可能となります。金融商材を提供することで、鮮度の高いデータを継続的に収集することが可能となり、市場の変動や顧客ニーズの変化に迅速に対応し、積極的に行動することで、ビジネスチャンスを広げていくことができます。
金融商材と既存ビジネスの融合、そしてそれに伴うデータ活用は、企業が自らの価値を最大化し、持続的な成長を達成するための重要な手段です。これらを積極的に活用し、ビジネス戦略の中に組み込むことで、企業は競争優位性を持続し、新たなビジネスの可能性を広げていくことが可能となるでしょう。
データは新たなビジネスの「土壌」であり、その上に未来のビジネスが築かれるのです。
次回は「既存ビジネス×保険」の融合の可能性とデータ活用について、具体的な業界事例をもとに考察します。
著者プロフィール:柏岡潤
リードインクス株式会社 代表取締役社長 兼 CEO
2006年にソフトバンクに入社後、法人/個人向けセールスに従事。
2018年よりグループ内でInsuretechを活用した事業展開を担当。現在はFintech事業推進の統括部長及びリードインクス社の代表取締役社長 兼 CEOを務める。
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