24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由(2/3 ページ)
福岡発のスーパー・トライアルが好調だ。24期連続で増収となっており、最近は小型店舗へのシフトも進む。特に顕著なのがDXに積極的な点であり、今回は同社の取り組みを解説していく。
(1)目指す姿が明確で、そこに向かう戦略も緻密に策定できている
同社が5〜10年で実現したいと掲げているビジョンは「テクノロジーと、人の経験知で、世界のリアルコマースを支える」です。テクノロジーと人の経験に徹底的にこだわり、かつその展開範囲はグローバルであることが明確です。そして、自社の強みはECではなく店舗に据えるという宣言のようにもみてとれます。
(2)点ではなく線でつながる全体最適でDXを実現している
小売業のDXは「点」での施策となりがちです。つまり、アプリを入れる、AIカメラを入れるなど、手法を一つずつ導入するのが目的になってしまい、それぞれが分断されてしまうことが少なくありません。
一方、トライアルホールディングスのDXは、テクノロジーのバリューチェーンのようにつながり合っています。顧客と自社の両面に、効率化とニーズ対応の高度化を実現するような取り組みを多数展開しているのです。
その代表例が「Skip Cart(スキップカート)」と売り場のAIカメラです。
スキップカートは買い物カートにタブレット端末とスキャナーを設置したもので、プリペイドカードもしくはトライアルアプリを登録し、商品をスキャンするとレジレスで決済できる仕組みです。顧客にとっては並ぶストレスがなくなり、店舗にとってはレジ業務が削減できるメリットがあります。
また、レジまで行かずとも合計金額が分かることで、家計に合わせた買い物がしやすくなる効果もあるでしょう。「もう1品買っていくかどうか」の判断がしやすいのです。
なお、決済アプリはキャッシュレス化を促進するとともに、購買データを基にした最適と思われるクーポンを顧客に届けます。こうした全てをデータで管理することで、スキップカート利用者の来店頻度が6.3%向上し、有人レジよりも約4.2倍効率的であるといった結果が出ています。企画、商品開発、在庫・物流管理、陳列・販売まで川上から川下へ線のようにつなげていくデータ基盤を構築していることが、トライアルホールディングスの特徴です。
AIカメラは、利用者が棚の前で商品を選ぶ姿を分析し、適切な品ぞろえを実現します。購買した商品のみだけでなく「買わなかった商品」、つまり問題点や潜在ニーズのヒントを知るきっかけにもなるでしょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
トライアル、Amazonも開発 スマートショッピングカートがもたらす、真の顧客価値とは?
スーパーのショッピングカートにタブレット端末が搭載された「タブレットカート」を導入する店舗が国内外でじわじわと増えている。九州に本拠を置くスーパー、トライアルの「スマートショッピングカート」や、AmazonのAIレジカート「Amazon Dash Cart」。それぞれ、どのような特徴があるのか。
トライアルが「音声付きデジタルサイネージ」導入 福岡県の全店舗に
トライアルカンパニーは、ディスカウントストア「TRIAL(トライアル)」にデジタルサイネージ製品「インストアサイネージ」を導入したと発表した。

