AIが生成した文書は「手抜き」なのか? ”拒絶”する前に押さえたいポイント(2/2 ページ)
自治体における生成AIの利活用。今回は、「生成された文章に対する評価者側の問題」について考察する。
大学のレポート課題に生成型AIを使ってはいけない理由
――生成AIからの「意見」を適切に評価し、判断を下すためには、人間側にもその分野に関する一定の知識や経験が必要ではないのか。
これは多くの人が抱く自然な疑問だと考えられます。そして、その疑問に対する私の回答は「Yes」です。その意味で、生成AIが普及した未来では「AIを使いこなせる人」と「AIに使われる人」の二極化が進むのではないかと思います。
興味深いのは、大学における生成AIの利用について、見解が分かれていることです。もちろん、それぞれの見解は尊重すべきだと思いますが、私自身は「学びの機会という観点から、生成AIの存在は認識しつつも、距離を置くべき」という考えです。
その理由は単純です。AIからの「意見」を評価するための知識、経験は学びによってこそ得られるものだからです。特にレポート課題は、生成AIと親和性が高いため、依存しがちになります。一方で、学びの機会が奪われている可能性についても認識すべきです。いくら失敗しても学びの糧となる学生時代に、生成AIに依存してそつなく課題をこなすことにどこまでの意義があるのでしょうか……というようなことを考えています。
補足すると、AIからの「意見」を評価するために、多様な知識や経験を身に着けておくことこそが有用なのではないかと思います。
評価にも色々な方法があるのです。AIのたどった道筋を同じようにたどって検証する「トレース」という方法が最初に思い浮かびますが、そのためにはAIと同じ専門性が必要となります。
一方で、全く別の角度から、その「意見」を検証する「ベリファイ」というアプローチもあります。文化人類学の観点からとか、経営学的観点からなど、一見無関係な領域の知識がベリファイには役立つこともあります。学びは無駄にならないのです。その意味で、異なる専門性を持つ多くの人がAIが出した意見を検証する体制ができるとよいのかもしれませんね。
次回は、自治体における生成AI活用の具体的な事例を紹介します。併せて、自治体のDX推進計画策定のポイントや評価に関する考え方などについても考えていきましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ChatGPTに重要な情報を送っても安全か? 自治体のネットワーク分離モデルから考える
自治体における生成AIの利活用、今回は「送信された情報の管理の問題」、つまり「ChatGPTに重要な情報を送信しても安全なのか?」という点について考えたい。
プロンプトの悩み不要 自治体で使うべき「ChatGPT Plus」の機能とは?
生成AIを業務に導入する自治体が増える一方で、依然として活用に二の足を踏む自治体も。何がハードルになっているのか。
5分の作業が船移動で半日仕事に……沖縄・竹富町が挑むDX 離島の不利性どう解消?
沖縄県竹富町は、島しょ自治体が抱える不便をテクノロジーで解消しようと、DXに注力している。これまでは、5分で終わる町職員の業務が、離島へのフェリー移動を伴う出張となれば半日かかることもあった。
東京都、生成AIをどう利用? 最大の効果は「時短」ではなく……
8月から文章生成AIの全局導入を始めた東京都は、生成AIのメリットについて「単純な業務時間の短縮効果にとどまらない」とする。導入から約3カ月。東京都が生成AI活用を通じて得た「時短効果」以上の手応えとは――。
生成AI、那覇市はどう活用? 職員も思いつかなかった、AIが提案したアイデアとは
2023年12月から生成AIを導入した沖縄・那覇市。利用シーンを6つのケースに絞り、文章のたたき台作成などに用いている。行政が生成AIなどの先端技術を使う意義とは――。
