人里離れた絶壁にあえて出店 130席の“ぽつんと”レストランなぜ人気? 驚きの「バッドロケーション戦略」に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
飲食店の常識である「好立地」から離れ、バッドロケーションを自ら選び、出店している企業がバルニバービだ。なぜ、そのような戦略をとるのか。同社の取り組みを取材した。
淡路島と出雲から、地方創生モデルを全国へ
バルニバービでは、フロッグス・ファームで実現した地方創生のビジネスモデルを全国各地に横展開することを考えている。淡路島だけでなく、島根県出雲市でもプロジェクトが進んでいる。出雲市は人口約17万人で、島根県では松江市に次ぐ人口規模がある。全国的に著名な出雲大社もあって、観光地として成功しているエリアだ。
そんな中、同社が進出したのは出雲大社から車で1時間ほど西に行った、日本海沿いの多伎地区。夕陽が沈む光景がきれいといった点では、淡路島西海岸と似た面がある。この地に、2023年5月「GARB CLIFF TERRACE Izumo(ガーブ クリフテラス イズモ)」という飲食店がオープンした。島根の食材と薪火料理を売りにしており、訪れた人からは「この店は島根っぽくない」といった評判を聞く。
同店の地下にはホテル「Izumo HOTEL THE CLIFF(イズモ ホテル ザ クリフ)」をオープン。8室の小規模なホテルながら、岸壁の中に建ったような独特な建築で人気になっている。7月に発表があった国内初となる「ミシュランキーホテル」のセレクションで、山陰から唯一1つ選出され「1ミシュランキー」を獲得した。バルニバービによれば「このホテルに泊まる人は、どこにも外出しないで部屋でゆっくり過ごす人が多い」とのことで、ホテルそのものが観光地となっているようだ。
他にも、道向かいにハンバーガーやアイスクリームのショップもオープンするなど、第2のフロッグス・ファームのようになりつつある。淡路島南部の野生動物しかいなかった山林、そして山陰のひっそりとした場所を魅力的な街に変貌させる取り組みの今後に、注目が集まる。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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