なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
「調剤薬局」の倒産数が増えているが、日本はそもそも人口当たりの薬剤師数が多いといった状況もある。今後、薬局が生き残るには……。
WHOも推奨
これは「薬は毒」みたいな陰謀論的な話ではない。WHOでも抗菌薬の使用を減らすアクションプランを採択しているし、日本の厚生労働省が発行する「抗微生物薬適正使用の手引き」でもこう述べている。
「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」
しかし、現実はどうか。皆さんもちょっと体の具合が悪くなると病院に行って、「やっぱり市販薬よりも病院の薬は効くので」なんて言って薬を処方してもらうのではないか。そして、調剤薬局でもそれをもとにバンバン薬が出されていく。
こういう「過剰処方」という状況に対して「薬のプロ」であるはずの薬剤師、調剤薬局は何をしているのかと疑問に思う人も多い。もちろん、中には「うちの調剤薬局ではずっと注意喚起をしてきたぞ!」という方もおられるだろうが、米国で行われたような業界を挙げたキャンペーンがあったわけではないので、このような問題も世間的にはほとんど知られていない。
ならば、「薬を出さないことをゴールにした調剤薬局」があってもいいはずだ。
このような「自己矛盾としっかり向き合う」という捨て身の戦い方は、調剤薬局以外でもできる。例えば、コンビニの店舗は「社会インフラ」ともてはやされながらも、かつて成長エンジンだったドミナント戦略の影響を受けて、都市部や幹線道路などのロードサイドに多く、過疎地には少ない、という問題があった。
しかし今、その自己矛盾に向き合うかのように、ローソンは過疎地に積極的に出店を進めている。もともとローソンはコンビニ大手3社の中でも地方店を多く抱えており、高齢化率の高い地域で高シェアを保っている。そこでこのような特性を生かして、過疎地に「商機」を見い出そうとしているのだ。
レッドオーシャンでは、多数派と同じことをするプレーヤーは滅んでいくだけだ。それは裏を返せば、「薬を出さない」に舵(かじ)を切った少数派の調剤薬局が「健康」「美容」「高齢者」「地域社会」などを切り口に、さまざまなコラボやスピンオフを仕掛けていくということでもある。
コンビニより多い社会インフラ、約6.2万の調剤薬局が今後どのような「進化」を遂げていくのか注目したい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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