キャッシュレス大国インドを支える「UPI」システムとは? 現地視察から見えた、日本で電子決済が進まない理由:がっかりしないDX 小売業の新時代(3/3 ページ)
筆者がインド視察で衝撃を受けたのは、空港の自販機で現地の携帯電話番号がないと買い物できなかったことだという。インドのキャッシュレス化の動きを追っていくと、日本でキャッシュレス化が進まない要因が浮かび上がってくる。
キャッシュレス化から取り残される日本
2023年の日本のキャッシュレス比率は39.3%であり、インドに限らず、他の主要国と比較して相対的に低い水準にあります。
アジア地域では、韓国が95.3%、中国が83.8%と高い比率を示しています。
ヨーロッパでは、スウェーデンがカード所有率98%以上で、2024年までに完全キャッシュレス化の可能性があります。ノルウェーは実店舗取引の97〜98%がキャッシュレスで行われ、オランダもデジタル決済利用率が91%に達しています。
オーストラリアは72.8%、米国も53.2%と、日本より高い比率です。
日本のキャッシュレス比率が低い理由として、生活者の変化を嫌う意識といった話や現金信仰の根強さが挙げられることがあります。しかしながら、一昔前は他の国でも同じでした。
インドと比較した場合に顕著なのは、政府のキャッシュレス推進力が弱いことです。先述の通り、インド政府は2016年に高額紙幣を廃止するデモネタイゼーションを実施し、現金使用を強制的に減少させました。また、UPI(統一決済インターフェース)の導入により、複数の銀行や決済サービスを統合し、生活者が一つのプラットフォームで簡単に取引できる環境を整えました。このような政府の強力な介入が、インドのキャッシュレス化を急速に進めています。
一方、日本では政府のキャッシュレス推進策が相対的に弱く、大規模な政策やインセンティブが不足しています。
また、日本のキャッシュレス決済手段は欧米で主であるクレジットカード、デビットカードの他に、電子マネー、QRコード決済など多岐にわたり、統一性がありません。このため、生活者はどの手段を選ぶべきか迷い、店舗側も複数の決済手段に対応する負担が増えています。
決済手段の乱立と政府の推進力不足が、日本のキャッシュレス比率の低さにつながっていると考えられます。
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