「おでん」の政権交代? 主戦場はコンビニから外食へ ユニークなお店が続々と生まれる背景:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/6 ページ)
かつてコンビニの人気商品だった「おでん」だが、昨今は外食へと主戦場がシフトしているようだ。コンビニ各社の戦略と、コロナ禍前後で生まれたユニークなおでん居酒屋たちの現況を探る。
著者プロフィール:長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。
コンビニの秋冬シーズンにおける代表商品であり、一時は通年でも販売していた「おでん」が、コロナ禍を機に急速に姿を消し、復活の動きが鈍い。東京都心部、特に山手線の内側ではおでんを展開している店が少なく、“絶滅危惧種”になっている。各地の政令指定都市、県庁所在地レベルの街や、それらの近郊の駅前店でも同様の状況であり、現在はロードサイドを中心に販売しているようだ。
東京都立川市のJR立川駅南口から徒歩1分以内に、3大チェーン(セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソン)の店舗が計4つある。行ってみると、おでんの販売をしている店はなかった。同駅はJR東日本で14位、1日平均で約15万人(2023年度)の乗車数があるほどの商圏であるにもかかわらず、だ。
とあるコンビニ店員に聞くと、フランチャイズ(FC)本部はおでんを販売してほしいと望んでいるが、FCオーナーや店長といった現場サイドで渋るケースが多いという。「おでんは難しい商品で、売れる個数より、廃棄する個数が多い日もある。雨が降った日は最悪で、ガテン系のお客さんは仕事がないから来ないし、普段は徒歩や自転車で来る近所の人は出歩かない」と話す。天候など外的要因に左右されるのが不評のようだ。
特に都心部は、ランチの時間帯は売れるものの夜は需要が減少し、仕込んだおでんがどうしても売れ残ってしまう。特定の人気商品だけでは見栄えが悪く、あれこれ仕込んでいくと、廃棄ロスが増えて利益を圧迫する。駅前の店では、バスや電車で帰宅する人が、においやつゆのこぼれるリスクを嫌がり、おでんを買わない傾向が出ていて、夜はそれが顕著なのだという。朝はそもそも全く売れないそうだ。
揚げ物ならば、ショーケースになくても、少し待ってもらえれば揚げてすぐ提供できる。ところがおでんは、仕込みに1時間くらいかかってしまうので、そうもいかない。そもそも揚げ物は冷凍で店舗に納品するため、廃棄ロスも少ない。このように、おでん固有の難しい事情があるのだ。
こうした背景を受け、カウンター周りにあったおでんは、どんどん揚げ物に置き換わっているのである。では、コンビニのおでんを買わなくなった人たちは、どこに行っているのか。
答えは「外食」である。まだ、大きなうねりにまではなっていないが「おでん屋たけし」「呼炉凪来(コロナギライ)」といった、コロナ禍以降に台頭してきた新興のおでん居酒屋チェーンが、東京都心部などで連日盛況だ。これらはFCを活用して、全国への拡大を始めている。
また、以前からうどんチェーンの「はなまるうどん」(418店、2024年2月末時点)や、「資さんうどん」(75店、2024年11月末時点)でもおでんを提供している。はなまるうどんに限らず讃岐うどんの専門店は、おでんを提供する店が多い感がある。北九州市出身の資さんうどんは全国展開を目指して、すかいらーくグループにM&Aされたばかりだが、おでんも重要な商品の1つだ。
外食に需要を奪われつつある、おでん。今回はその商戦の現状を、コンビニと外食の両面からまとめていく。
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