作業時間30分→10分も視野 「間取り図」作成にAI活用 不動産業界に大きなインパクト:不動産DXのいまを知る(2/2 ページ)
一目で物件の基本情報を伝えることができる「間取り図」。今回は、間取り図の作成にフォーカスをあて、そのプロセスにおいてどのようにAIが活用できるのか、間取り図の作成におけるDXは可能なのかを紹介する。
間取り図作成にAIどう活用?
そうした中、QCDのさらなる改善を目指すため、アットホームでは間取り図作成においてAI技術の導入を進めています。独自に開発した間取り図作成ソフトにAI技術を活用することで、これまで人が行っていた間取り図の作成プロセスの大幅な効率化を目指しています。
AIを活用した間取り図作成プロセスには6つの工程があります。
(1)原稿の取り込み:手書きや既存の間取り図をスキャンし、デジタルデータとして取り込みます。
(2)壁の描画:取り込んだデータをもとに壁の位置を描画します。
(3)ドア・窓の配置:壁の位置が決定した後、ドアや窓を配置します。これにより、間取り図の構造が徐々に具体化されていきます。
(4)建具や部品の配置:トイレやキッチンなど、建物内の設備や部品の配置を行います。
(5)文字の挿入:「洋室」「リビング」「キッチン」などの部屋の名前や面積、寸法の情報を記載します。これにより、間取り図がより分かりやすくなります。
(6)色付け・仕上げ:最後に、図面に色を付けて視覚的に見やすくします。部屋ごとに異なる色が付与されることで、間取り図の完成度がさらに高まります。
現在は、この6つの工程において(2)〜(3)のステップにAIの導入を進めています。
具体的には、手書きや既存のデジタル間取り図をスキャンし、AIが自動で壁・ドア・窓・建具などの位置を認識し配置する技術です。画像解析技術とAI学習を活用することで、自動化の実現に向けた開発を進めています。
現在のプロトタイプでは、壁、ドア、窓の配置まで開発が進んでおり、その精度は約80%に達しています。従来、間取り図の作成時間は、物件の間取りや大きさによって異なりますが、平均すると1件あたり約30分かかっていました。
AIを活用することで、AIの作業結果を人が確認する必要はあるものの、作業の自動化により大幅な時間短縮が可能となります。現時点では、実際の作成時間はまだ10分には達していませんが、今後の開発によりさらなる短縮が期待されます。
今後は、さらに文字の配置や色付けを自動化することで、間取り図全体の作成プロセスをほぼ自動で完了できるように開発を進めています。
しかし、AIの活用には課題もあり、100%の自動化が難しい点が挙げられます。現在の精度は80%ですが、AIの学習データを増やしていくことで、将来的には95%以上の精度を目標としており、AIが作成した間取り図に対して、誤りを修正する作業負担も大幅に減少させることを目指しています。その結果、AIの導入により、コスト削減にもつながると考えています。
AIの活用は、間取り図作成のプロセスを劇的に変える可能性を秘めています。AIを活用した間取り図作成は、将来的に業界のスタンダードとなるかもしれません。
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