鳥貴族が新時代の「居酒屋王」に!? 苦戦するライバルと差がついた決定的な理由:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
コロナによるダメージから回復しきっていない居酒屋各社。その一方で、新しい王者として台頭してきたのが「鳥貴族」だ。苦戦するライバルとの違いはどこにあるのだろうか。
コロナ禍で大きなダメージを受けた外食業界。コロナ収束後は需要が回復したのだが、その回復度合いは業態によって異なっている。図表1は、外食産業における業態別の売り上げ推移をコロナ前(2019年)と比較したものだ。ファストフード、ファミリーレストラン、喫茶など、いわゆる「昼の業態」はコロナ前を上回っていることが分かる。
しかし、ディナーレストランは出遅れて、コロナ前の水準が定着したのは2024年後半頃から。居酒屋に関しては7割台までしか回復していない。コロナ禍を経て、夜の需要は明らかに減ったのである。
読者の皆さまも会社の飲み会が減り、やるにしても2次会に行くという雰囲気が薄くなったことは感じているだろう。健康上の理由からも飲酒習慣のある人が減少傾向にあり、低アル、ノンアル化も進んでいる。誘い文句も「飲みに行く?」から「メシ食いに行く?」へと変わりつつある。コロナが落ち着いた現在でも、居酒屋需要は成長が見込めないどころか、コロナ前の水準さえ程遠く、「この業態で伸ばしていこう」というのは勇気がいる。
10月には、ワタミが米国ファストフード大手であるサブウェイの日本法人を買収したことが話題となった。需要が回復しきらない居酒屋を再び増やしていくのではなく、伸びているファストフード業態に参入するのもさもありなん、と思えてくる。
コロナから回復しきれない居酒屋各社
ワタミ以外でも、コロナによる大ダメージと、コロナ後の市場回復の遅れで、居酒屋各社の伸び悩みは明らかだ。図表2は、ワタミの他、コロワイド、大庄、SFPホールディングス、チムニーという上場居酒屋企業の売上(もしくは総売上)と店舗数を、コロナ前後で比較した表だ。
これを見ると、全ての企業が売り上げも店舗数も大きく減ったままであることが分かる。コロワイドについては居酒屋関連売上高の開示がないが、店舗数に占める居酒屋関連の割合が16.7%から10.1%へと縮小しており、居酒屋離れが進んだことは明らかだろう。
ちなみに、コロワイドはM&Aを活用して業態の多様化を進めており、焼肉業態(牛角)、回転寿司業態(かっぱ寿司)、定食屋業態(大戸屋)など複数の業態へと分散を進めてきた。そのため、居酒屋依存度がすでに低く、コロナ禍によるダメージはかなり軽減されていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
赤字転落のヴィレッジヴァンガード 苦境の原因は「サブカル不調」「人材不足」だけとは言い切れないワケ
ヴィレヴァンが2024年5月期決算で赤字転落を発表すると、「ヴィレヴァン経営の失敗?」といった記事が散見されるようになった。「独自性が失われた」「店づくりができる人材が減ってしまった」といった論調が中心だが、果たして問題はそれだけなのだろうか?
「肉のハナマサ」は肉以外も強い “異常値販売”で乗り込む関西マーケット争奪戦
業務用食品スーパー・肉のハナマサが今秋、関西に進出する。大手や地場企業がひしめく関西マーケットで、肉のハナマサはどう戦うのか。一時は経営難に陥ったハナマサを立て直した親会社のある戦法が、激化する関西のスーパー市場で有効なようだ。
300円ショップ好調の裏で 「100円死守」なセリアが苦しいワケ
物価高を背景に、ディスカウント型のスーパーを利用する消費者が増えている。多くの消費者がより安いものを求める中、100円ショップ業界ではある意外なことが起きている。
スーパー再編の大一番 首都圏を勝ち取るのはイオンか、セブンか それぞれの勝ち筋とは
上場している小売企業の決算期は2月が多いので、小売ウォッチャーにとって毎年4月は各社の決算発表を追いかける季節。今年はビッグネームの再編に関するニュースが飛び込んできて、個人的には興味津々の春となった。

