2024年、何があった? 小売業界「11大ニュース」を振り返る(1/5 ページ)
物流問題に原価高など、2024年も小売業界はさまざまなトピックスがあった。今回は1年の締めくくりとして、本年の出来事を「11個」に整理してお届けする。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティング、ベイン・アンド・カンパニーなどで小売業・消費財メーカーを担当。2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。著書に『小売業DX 成功と失敗』など。
今回は2024年の振り返りとして、小売業界で話題を呼んだ11のトピックスを取り上げることで、2025年のヒントとしてまとめたいと思います。
(1)物価高はやや落ち着くも、価格戦略が活発化
2023年は「値上げラッシュ」の年でした。小売に外食、エネルギー関連など生活に密接する品目で多くの値上げがあり、家計を直撃しました。2024年の価格上昇率は「3.9%」で、2023年の「6.0%」と比べると落ち着いています。しかし、依然として賃金が物価上昇に追い付かない状況が続いています。
こうした中、小売業界では家電量販店のノジマやビックカメラ、ドン・キホーテなどがダイナミックプライシングを推進しています。これらのチェーンでは、全国一律の価格ではなく、エリア別・店舗別に柔軟な価格対応を強化しています。
セブン-イレブンは9月に「嬉しい値!宣言」という新コンセプトを立ち上げ、8月末時点で約20品だった対象アイテムを270品に拡大。低価格ニーズへの対応を強化しています。プライベートブランド(PB)の品質向上を実現してきた同チェーンが、ここにきて低価格対応を再度強化したのは注目に値します。値上げによる顧客離反を防ぎ、来店頻度の向上を重視していることがうかがえる、象徴的な取り組みです。
(2)CVSやGMSの店舗数が飽和、ドラッグストアが堅調に推移
次のグラフにある通り、日本チェーンストア協会会員である47社の合計店舗数は2023年から2024年にかけて、1517店舗も減少しています。中でもイトーヨーカドーは2016年に182だった店舗数が2024年末には92店舗を計画しており、5割減となる見込みです。
都市部への人口集中や、地方の人口減と高齢化が進む中で、今後の出店戦略をどう描くか、20〜30年先の市場を見定める精度を上げることが求められています。
例えば、一概に都市部がチャンスというわけではなく、競合性が増していく点に注意が必要です。地方は人口こそ減るものの、閉店が増加する中で残った店舗への消費の流入という残存者利益が見込まれます。このように、現状の市場環境のみではなく、未来の市場予測を「人口」「年齢構成」「エリアのニーズ特性」「物流の効率性」「競合性」など多角的に考察して出店・閉店を判断する必要があります。
コンビニエンスストア(CVS)とドラッグストアで大手3社の店舗数を見ると、ドラッグストアはCVSの6.4倍も店舗数が増えています。また、CVSは2社が減少しているのに対し、ドラッグストアはトップ3社とも好調です。ドラッグストアは調剤や医薬品という強みを起点に、食品や化粧品、日用雑貨品へとカテゴリーを広げ、CVSやGMS、ホームセンターといった近隣ジャンルの市場を奪いながら成長しているのが特徴です。他のカテゴリーを奪取していく動きは今後も加速していくことが予想されます。
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