2024年、何があった? 小売業界「11大ニュース」を振り返る(3/5 ページ)
物流問題に原価高など、2024年も小売業界はさまざまなトピックスがあった。今回は1年の締めくくりとして、本年の出来事を「11個」に整理してお届けする。
(4)「2024年問題」がより深刻化
物流業界で「2024年問題」といわれた本年には、輸送人員に加えて倉庫人員の不足、そして人件費やガソリン代の高騰など、深刻な課題が顕在化してきました。物流大手であるヤマトホールディングスが、2024年度の上期連結決算で150億円の赤字へと転落したのが象徴的です。
今後はさらに輸送リソースの不足が想定され、輸送・倉庫人員の確保、業務の効率化に加え、ロボットをはじめとしたデジタル化推進、物流費の価格転嫁、他社との物流統合会社設立など多角的な対策が急務です。
例えばカインズとP&Gは、9月に包括的なサプライチェーンの協働強化を発表。トラックの帰り便を活用した共同輸送を本格開始しました。ダイドービバレッジサービスが2025年1月21日付でアサヒ飲料販売を吸収合併し、ダイドーアサヒベンディングへと商号を変更し、自販機オペレーションの効率化、将来的な人手不足への対応など早期に対策を取ったのも象徴的です。ビジネス面では競合していても、オペレーション面では協働して収益を保持する。この流れで、さまざまなプレーヤーがタッグを組んでいくことでしょう。
(5)ライトワンマイルの取り組みが加速
セブン-イレブンの「7NOW(セブンナウ)」は、セブンの商品をスマホで注文すると、最短20分で配送するサービスです。8月時点で約1万6000店舗に拡大しており、2024年度中に全店での展開を掲げています。店舗の商品を宅配する動きは今後、小売業でより進んでいくでしょう。店舗は、商品を購入してもらうだけではなく、宅配用の在庫という役割も担うようになり、それによって物流費の軽減を図りながら店舗ならではの強みを生かしてECに対抗する流れです。
(6)顧客の声をいかに活用するかがポイントに
ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)グループは、1500万人以上の会員を持つオリジナル電子マネー「majica(マジカ)」公式アプリ内に、新たな機能として「マジボイス」を導入。アプリ内で商品の評価やコメントをできる機能として、商品の改善や他の人の評価を確認した上で購入する流れを実現しました。メイン機能の一つである「正直レビュー」には、開始7カ月で累計62万件の評価・コメントが投稿され、顧客視点のマーケティングを具現化した取り組みとして、他の小売企業からも注目を集めています。
この「顧客視点」という普遍的かつ本質的なテーマは、今後さらに重要性を増していきます。
市場が飽和する中、各企業は自社の増収増益をどう確保するかが一義になりがちです。しかし、それを実現して継続するには徹底した顧客視点が必要なのです。主語が「お客さまが」「お客さまにとって」ではなく「当社が」「当社にとって」となれば、顧客離反を起こしかねません。
これはテクノロジーにおいても同様です。生成AIが注目を集めたことで「AI導入ありき」の取り組みをしがちですが、あくまで目的は「AIの導入」ではなく「お客さまにとってどう価値があるか」です。テクノロジーが主役とならないよう、十分に気を付ける必要があります。顧客視点という原点に立ち返れた企業だけが、これから勝ち組となるといっても過言ではありません。
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