2024年、何があった? 小売業界「11大ニュース」を振り返る(5/5 ページ)
物流問題に原価高など、2024年も小売業界はさまざまなトピックスがあった。今回は1年の締めくくりとして、本年の出来事を「11個」に整理してお届けする。
(10)ウエルシアとツルハの経営統合
2月、ドラッグストア首位のウエルシアホールディングスと2位のツルハホールディングスが経営統合を発表。売上高2兆円超のドラッグストアが誕生する見込みです。
特に注目なのが、ヘルスケア市場です。経済産業省によると、2020年に18.5兆円だった市場は2050年には59.9兆円になるとのこと。異業種から参入も増えている中、小売業においてはドラッグストア、特に調剤機能を強みとした展開に注目が集まっています。ドラッグストア同士の統合や別業態からの買収、商社など異業種による買収など、ドラッグストアを軸としたM&Aは今後、さらなる増加が予想されます。
(11)人材不足への対応
労働人口が減少していく日本市場において、小売業も例外ではありません。今後も人材の取り合いは継続していきます。特に出店を継続するには多くの人材を要するため、定年退職や転職などの人材減少数と、採用による増加数のバランスが取れないと、現場負荷が増大してしまいます。それがまた次なる離職を呼び起こしてしまう、という負のサイクルに陥らない対策が急務です。
そのために人材紹介会社の活用や、自社イベント、外国人募集といった形で採用手法を多様化するとともに、スポットワーカーや出戻りを歓迎するなど、採用基準の見直しが必要でしょう。イオンが9月に、退職理由を問わず再入社できる制度を開始したのは好例です。
従来の制度では結婚・出産・育児・介護などのやむを得ない事情で退職した人を対象としていましたが、今回は競合へ転職した人や、新卒採用時に内定を辞退した人も対象です。
イオンの他にはカインズが、独自の人事戦略「DIY HR」を推進。「じぶんらしい働き方、創ろう。」というスローガンの下で「キャリアパス」「ラーニング」「コミュニケーション」「ワークスタイル」「ウェルビーイング」に注力しているなど、各社で採用・教育・評価の見直しが活発化しています。
「開示義務化」によって人的資本経営の取り組みが加速することは間違いありません。採用の確保と入社後の成長促進は、店舗対応品質に直結し業績に影響する大変重要なテーマでしょう。
今回は、2024年の締めくくりとして、小売市場を中心とした11大ニュースを紹介しました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
著者プロフィール
佐久間俊一(さくま しゅんいち)
レノン株式会社 代表取締役 CEO
城北宣広株式会社(広告業)社外取締役
著書に「小売業DX成功と失敗」(同文館出版)などがある。
グローバル総合コンサルファームであるKPMGコンサルティングにて小売企業を担当するセクターのディレクターとして大手小売企業の制度改革、マーケティングシステム構築などDX領域のコンサルティングを多数経験。世界三大戦略コンサルファームとも言われている、ベイン・アンド・カンパニーにおいて2020年より小売業・消費財メーカー担当メンバーとして大手小売企業の戦略構築支援及びコロナ後の市場総括を手掛ける。2021年より上場会社インサイト(広告業)のCMO(Chief Marketing Officer)執行役員に就任。
2022年3月小売業と消費財メーカーの戦略とテクノロジーを専門にコンサルティングするレノン株式会社を設立。
2019年より1年半に渡って日経流通新聞にコーナーを持ち連載を担当するなど小売業には約20年間携わってきたことで高い専門性を有する。
日経MJフォーラム、KPMGフォーラムなど講演実績は累計100回以上。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
イオン、セブン、ドンキ…… なぜ安くて価値ある独自商品が次々と生まれるのか 注目すべきPB10選
これまでは「安かろう悪かろう」というイメージもあったプライベートブランドだが、昨今は各社が注力し、一部でナショナルブランドを上回る評価を得るものも出てきた。そうした商品や、各社が取り組む背景に迫る。
24期連続増収のスーパー「トライアル」 安さだけではない、納得の成長理由
福岡発のスーパー・トライアルが好調だ。24期連続で増収となっており、最近は小型店舗へのシフトも進む。特に顕著なのがDXに積極的な点であり、今回は同社の取り組みを解説していく。
