ユニクロやDAISOにそっくり? ナゾの中国発雑貨「メイソウ」が、世界中で高速出店できるワケ:がっかりしないDX 小売業の新時代(2/2 ページ)
中国発の生活雑貨店MINISO(メイソウ)をご存じだろうか。日本のユニクロに似た看板と、無印良品とDAISOを組み合わせたような店舗や商品デザイン――。この日本ブランドにそっくりな“謎”の生活雑貨大手が、世界中に高速出店している。躍進の背景を探る。
MINISOが世界中で高速出店できるワケ
インドにおいて、MINISOが270店舗以上(2024年9月時点)を展開するのに対し、DAISOは7店舗(2024年9月時点)です。インドは輸入規制が強く、これまで出店のハードルとなっていました。そのためMINISOはインドの現地企業と組み、今後は現地生産にも力を入れると発表しています。
DAISOは米国がすべて直営店舗であるように、国内でも直営3504店に対し代理店837店舗と直営店舗に強みを持ちます。それに対してFC店舗の多いMINISOはFCに適したビジネスモデルを持っています。
MINISOの成長を支えるビジネスモデルの核は、「3つの高」(ハイテク、高効率、高品質)と「3つの低」(低コスト、低マージン、低価格)を組み合わせた戦略です。
この戦略により、生活者に対しては手頃な価格で高品質な商品を提供しつつ、効率的な経営と収益性を実現しています。商品企画から生産、物流、販売までを高度に効率化し、無駄なコストを徹底的に削減することで、価格競争力を維持していることが基本になります。これはユニクロやニトリのような日本の優れた製造小売チェーンと共通する要素です。
特筆する点は、SKU(Stock Keeping Unit:受発注や在庫管理の際に用いられる、商品を識別するための最小単位)数を約3000点に限定するという制約を自ら設けていることです。
この制約により、需要予測の精度を高め、無駄な在庫を抱えるリスクを軽減しています。また、定期的に新商品を投入することで、生活者に新しいものを見つける楽しさを提供し、来店動機をつくっています。SKUの絞り込みは、効率的なサプライチェーンを支えるだけでなく、商品回転率を向上させる重要な仕組みとなっています。
MINISOのもう一つの特徴は、従来のフランチャイズモデルとは異なる投資パートナーシップモデルにあります。このモデルでは、通常はフランチャイジー(加盟店)が負担する在庫リスクをすべて本部が引き受けています。この仕組みにより、フランチャイジー(加盟店)は初期投資を抑え、地域に根ざした店舗運営に専念することが可能です。また、店舗運営にかかる負担を軽減しながら、売り上げの62%を本部に納付する仕組みを採用し、収益構造の透明性を保っています。
本部は製品選択や価格設定、店舗運営の管理を一元化することで、世界中で統一されたブランドイメージと顧客体験を維持しています。この一貫性は、生活者に信頼感を与え、MINISOブランドの認知度を高めるうえで大きな役割を果たしています。さらに、各国でのフランチャイズ店舗の拡大に伴い、スケールメリットを生かしたコスト削減と供給の安定化も実現しています。MINISOの店舗の9割以上はFC店舗であり、直営店舗はごく一部です。
オムニチャネル戦略にも積極的で、実店舗体験とデジタル技術を組み合わせています。店舗では商品に直接触れられる体験や、発見の楽しさを提供し、オンラインでは商品詳細情報の閲覧や在庫確認、店舗受け取りサービスなどを通じて利便性を高めています。
特に中国国内では、WeChatなどのソーシャルメディアを活用し、若年層とのつながりを強化しています。これにより、オンラインとオフラインの双方から得られるデータを活用し、商品開発や在庫管理、マーケティングにフィードバックすることで、より効率的な運営を実現しています。
ただし、こうしたデジタル戦略は地域ごとに調整が必要です。例えば、インドでは国家安全保障上の理由からTikTokやWeChatなどの中国製アプリが禁止されているため、デジタル施策のローカライズが課題となっています。それでも、MINISOの実店舗を中心とした体験価値の提供と効率的な運営は、他地域でも十分に通用する戦略であり、グローバル市場での成功を支える鍵となっています。
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