2015年7月27日以前の記事
検索
連載

ようやく解禁の「寝台バス」は普及するか? 東京〜高知で試験運行開始 長所と短所を考察(3/3 ページ)

国土交通省が安全指針を公表したことで解禁となった「寝台バス」。さっそく3月には東京〜高知間で試験運行が始まるが、果たして広がっていくのか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-
前のページへ |       

寝台バス普及のための「2つの条件」

 日本ではやっと解禁になった寝台バスだが、海外では以前から普及していた。特に鉄道・航空網の乏しいアジア圏で散見される。

 中国では1980年代に寝台バスが現れ、経済成長とともに利用客が増えていった。しかし、事故時の死亡率が高いという理由で2012年に政府が寝台バスの製造を禁止。コロナ禍前の時点でほぼなくなったといわれる。とはいえ、日本では高速バスの事故が頻繁に起きているわけではない。実際の運行次第だが、事故の影響を懸念する必要はないだろう。

 考慮すべきは採算性だ。一般的な高速バスの席数は3列タイプで約30席、4列タイプで40席前後である。高知駅前観光の寝台バスは24席。採算が取れるようにするには、単純計算で運賃を通常の高速バスの1.5倍にする必要がある。前述の通り、高知駅前観光が想定する正式価格も同程度の倍率だ。ちなみに前述のドリームスリーパーは、1万9000円前後である。

 東京〜大阪間の場合、夜行バスの相場は7000円前後。1.5倍と仮定して、寝台バスの運賃は1万500円となる。新幹線の自由席は1万3870円であり、長い所要時間を考慮するとそこまで優位性があるわけではない。


WILLER EXPRESSが手掛ける「リボーン」のシェル型シート(出所:同社公式Webサイト)

リボーンでは「眠り」をテーマにしており、さまざまな機能性を有する(同前)

同前

 中国では安全面で廃止になったと述べたが、高速鉄道や国内便の普及も背景にある。既に交通網が充実している日本国内において、、寝台バスの出る幕は多くない。寝台バスがニーズを獲得するには「(1)遠距離」かつ「(2)安い航空便がない」の2条件を満たす必要がある。高知の他、青森、鳥取のような中都市と東京を結ぶ路線に限られるのではないか。少なくとも、バスタ新宿(東京・新宿にある大型バスターミナル)が寝台バスだらけになる状況にはならないだろう。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る