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生成AI「社内利用率が上がらない」……いつもの業務プロセスに組み込むには?【連載】日本企業のDXには「DAP」が欠けていた(2/2 ページ)

業務に生成AIを導入したくても「社内利用率が上がらない」「社員がうまく使いこなせない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。生成AIを実業務に定着させるためには、DAPが有用です。

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効果創出

 リスクを防ぎながら生成AIを利用する準備が整ったところで、次に効果創出を目指してDAPを活用しましょう。先ほど挙げたユースケースの方向性に沿って具体例を紹介していきます。

方向性1:コード、画像、音楽などのコンテンツを生成する

 コード、画像、音楽などのコンテンツを生成するケースです。ChatGPTが世に出た初期から、日本語でやりたいことを示すとプログラミング言語で返してくれるという使い方がありました。かなりの精度でアウトプットされるので、出力されたコードにエラーがあれば修正を繰り返すことで、実際に動くプログラムを作成できます。また、画像や音楽など、クリエイティブ分野でも画像や音楽生成が導入されはじめています。

 従来のシステムと同様に、ツールの使い方をガイドするオーソドックスな用途です。

方向性2:会話形式によりナレッジにアクセスするケース

 企業のデータを学習させるなどして、まるで会社の中のエキスパートに質問するように、会話形式で知りたいことを得られるようにするものです。例えば、出張の日当はいくらだったか、営業活動でこのシチュエーションで使えそうな資料はどれだったかなど、知りたい情報を対話形式で得られるようにします。

 このケースでは、DAPを利用して、あえて自由度を抑えることで、特にITリテラシーが高くないユーザーでもスムーズにAIツールを利用できるように支援するのも一案です。

 例えば、営業担当者が客先を訪問する際に、営業マネジャーにコーチングを受けるようなシチュエーションを設定し、ここで最大限に活用できるようにします。顧客の業界、お会いする方の部門・役職、何回目の訪問かなどをAIに伝えるようなフォーマットを用意しておき、次に、有用な参考資料や次回の理想的なアジェンダ、キーメッセージといった質問内容を選択させます。その上で、プロンプトエンジニアリングを利用してAIツールに質問を投げ、回答をもらい、AIツールとの間である程度の情報共有ができた状態でQ&Aを続けてもらうといった方法が考えられます。

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方向性3:生成AIを一連のビジネスプロセスに組み込んで活用するケース

 生成AIによる単体の完結ではなく、一連のビジネスプロセスの一部に生成AIが組み込まれた形で活用されるケースです。例えば、生成AIと会話していて、その会話からプロセスが始まることもあるでしょう。または、通常のプロセスを開始しておいて、その中でAIに要約や内容確認させるなどもあるかもしれません。このように、生成AIは、ユーザーとのインタフェースとしても存在し得るでしょうし、プロセスの中でのみ使われる場合もあるかもしれません。

 このような利用用途は非常に自由度が高く、無限にユースケースが生み出されるはずです。用途をいかに生み出していくかが、企業の競争力につながるのではないでしょうか。

 本稿の冒頭でも触れたように、企業はDAPに組み込まれた生成AIを用いて、従業員に対し新しい業務プロセスを自動的に表示すると考えられます。例えば以下のような流れです。

 営業担当者であるあなたのもとに、顧客からメールが届きます。内容は「競合他社が半額で価格を提示してきた」というものです。

 DAPに搭載されたAIが「コンペでの失注リスクがあります」とアラートを出します。値引きが必要だと考えたあなたは、生成AIに「値引きのポリシーは?」と質問します。値引きポリシーが提示され、値引き申請が必要な場合にはリンクが表示されます。

 生成AIが提示してきた値引き申請システムへのリンクを開くと、転記すればいいだけの情報はDAPソリューションが自動的に申請画面へ入力します。あなたは申請理由を入力しますが、DAPソリューションは「記述内容が不足している」旨のアラートを出します。

 そこであなたは、受信したメールから始まるここまでの経緯を要約するように依頼し、要約が完了すると申請画面に戻ります。

 メール画面に戻ったあなたは「20%オフできます」といった簡素な文を入力します。適切な文面に修正するよう指示すれば、生成AIがビジネスメールとして問題ない文面を作成してくれ、メール送信が完了します。

 以上が、生成AIが業務の流れに組み込まれている例です。しかし、これをユーザーが各ステップを複数のシステムを行き来しながら実施しようとするとなかなか大変です。

 最初の「アラートを出す」ステップだけに着目しても、ユーザーが生成AIにメール文をコピー&ペーストして判断を仰ぐ必要があります。それをユーザーにやってくださいと言ったところで、システムの操作マニュアルに加え、業務マニュアルを片手に実施することになり、なかなか困難だと考えられます。

 そのため、自動的に生成AIがアラートを出す仕組みが必要でしょう。また、システムをまたぐことが頻繁に発生するため、どのように導線を作るかが論点になります。こういったユーザーがつまずきそうな「デジタルフリクション」を解消する設計が求められます。

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まとめ

 本章では、生成AI利用においてDAPの活用方法について具体例を示しました。特に、生成AIが自然に組み込まれた業務プロセスデザインを実現できるのはDAPの利点と考えられます。

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