コラム
「なぜ?」で責める上司、「なぜ?」で病む部下 職場に潜む“ナゼナゼ虫”の正体(2/6 ページ)
「なぜ?」を繰り返し、人を追い詰め、メンタルヘルス問題を引き起こす上司が増えている……。
「なぜ?」で人を責めてはいけない
実は「なぜ?」という問いで責められると、つい言い訳をしたくなるのは、人として当たり前のこと。人類の進化を研究した名著『ヒトは食べられて進化した』(化学同人)では、ヒトはもともとトラやヒョウなどよりもずっと弱い被捕食動物で、生き残るために「自己防衛本能」が発達し、進化を遂げてきたことが紹介されている。
つまり、「なぜ?」と責めれば、自己防衛本能が発動し、言い訳をして自分を守ろうとするわけだ。
ならば、「なぜ?」という質問が言い訳を誘導しているのに、「言い訳をするな!」と言うのは理不尽だろう。
ナゼナゼ虫は生産現場などで不具合が発生した際に、うわべの症状ではなく根本的な問題を見つけることを助けてくれる優れた益虫として、人と長年共存してきた。生産現場では、「なぜ?」という質問が向けられるのは、主にモノである。モノには自己防衛本能がないから、当然ながら問題は発生しない。
だが、ナゼナゼ虫が人を責めるようになると、理不尽を押し付ける恐ろしい害虫に変異してしまうのだ。
問題を他責にせず、自責の念を持つことが大事とはよく言われる。そういった考え方が浸透している職場にナゼナゼ虫が侵入すると、さらに深刻な問題を引き起こす。「なぜ?」という質問を自分に向けることにより、自分を責め、メンタルヘルス問題の引き金にもなりかねない。
「人のせいにしても問題は解決しない」とはよく言われるが、自分のせいにしても問題は解決しない。失敗しようと思って失敗する人はいないからだ。
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