企業側は個人のアカウントに開示請求できるの?
法的には、被害者が企業(法人)であっても、名誉毀損罪や侮辱罪は成立しますし、企業が誹謗中傷した相手に対して民事上の損害賠償請求をすることも可能です。もちろん、損害賠償請求などの前提として、企業が発信者情報の開示を求めることもできます。
刑事責任を問われた場合、どのくらいの刑が科されるかは、誹謗中傷の内容や被害者との間で示談が成立しているか、被害者感情などが大きく影響します。名誉毀損罪や侮辱罪は、被害者側からの告訴がなければ起訴できない親告罪です。そのため、被害者が告訴を取り下げれば不起訴になりますが、悪質な内容を広く発信し、被害者の処罰感情も強いケースでは懲役刑になることもあり得ます。
誹謗中傷による慰謝料額は、誹謗中傷の内容、拡散された範囲などにもよりますが、一般に10万円程度から100万円程度が多いと言えます。
企業側がSNS上での誹謗中傷に対し、個人に賠償請求をした事例もあります。
例えば、自家製スープを使っている人気のラーメン店に対し、個人のユーザーが、業務用スープを使っているかのような投稿をしたり、店主が反社会的勢力とつながりがあるかのような投稿をしたりしたケースで、裁判所は名誉毀損を認め、損害額を10万円と判断しました。
このケースでは、投稿のせいで売り上げが減少したという事情がなく、投稿者の発信力もそれほど高くなく、投稿者の投稿を閲覧できたのが特定人に限られていたことなどから、損害額が10万円と評価されたようですが、事案によっては、もう少し高額の賠償額が認められる可能性はあります。
企業のSNSアカウントが開示請求をする際の難しさ
企業が誹謗中傷された場合、精神的損害に対する慰謝料だけではなく、売り上げの減少など、財産上の実害が生じることもあり得るので、責任追及する必要性の高いケースもあるでしょう。
一方、サービス業を営む企業の場合、自身の顧客や顧客になり得る者に対して法的責任を追及することで、逆に客離れが生じるのではないかと悩むケースもあるかもしれません。
企業としては、公式SNSを運用する上で、“親しみやすさ”を維持しながらも、不適切な発信をしないよう、複数体制で臨むなどの工夫が大切でしょう。そのような炎上予防策を講じても、意図しない形で炎上することはあり得ます。
事案によっては、炎上したとしても無言を貫くだけで足りることもあるでしょう。それでは、企業の利益や従業員などを守ることができない場合、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。前述したように、誹謗中傷に対して法的に取り得る策は複数あり、事案に応じて適切な方法を検討する必要があります。
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