大阪・関西万博の“失敗”が日本にとってプラスになる、これだけの理由:スピン経済の歩き方(3/6 ページ)
大阪・関西万博の開催まであとわずか。さまざまな声があるが、筆者は日本経済を長い目で見ると、「ダダすべり」したほうが良いと考えている。その理由は……。
万博が「ダダすべり」したほうが良い理由
「おいおい、赤字になったら国が補てんしなきゃいけないんだから、そんな縁起でもないこと言うなよ!」というお叱りが飛んできそうだが、その損失を上回るだけのメリットもある。
そのメリットとは一言でいえば、「人口減少ニッポンでは巨大イベントやハコモノを“起爆剤”にして経済が成長するなんてムシのいい話はない」といった現実に、全ての日本国民が気付くということだ。
あまり意識していないだろうが、実はわれわれ日本人は「起爆剤」という考え方が大好きだ。
経済がうまく循環していないとき、景気が低迷しているときに、ドカンと巨大なハコモノや公共事業を立ち上げると、アラ不思議、ヒトもカネも集まってみるみる経済が上向きましたとさ――というなんともムシのいいサクセスストーリーを、政治家から官僚、さらには民間までが信じ切っている。
例えば、石破茂首相は地方創生を「経済成長の起爆剤」と位置付け、繰り返し演説で訴えている。しかし、首相から「起爆剤」として期待されている地方自治体側も、自力で経済活性化できないので結局、何かしらの「起爆剤」にすがっている。
分かりやすいのは、沖縄本島北部で建設が進むテーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」だ。デニー玉城沖縄県知事は「経済振興の大きな起爆剤」として大いに期待を寄せている。
では、こういう巨大テーマパークが誘致できない地方自治体はどうするかというと、ハコモノを「起爆剤」にする。例えば熊本市では今、600億円以上をかけて本庁舎の建て替え話を進めているが、これは「にぎわい創出の起爆剤」だと説明している。
似たような話は日本全国にあふれている。「駅前を再開発して地域振興の起爆剤にする」「新しく誘致した工場をきっかけに人口流出を防ぐ起爆剤としたい」――。石を投げれば「起爆剤」に当たるというくらい氾濫しており、国も自治体も民間もあらゆる人々が何かを「起爆剤」に豊かな未来を夢見ている状態だ。
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