「世界中で数十億人が依然として従来の金融システムから取り残されている中、デジタル資産は、金融アクセスの向上、コスト削減、セキュリティ強化の機会を提供する」
米ファスターペイメントカウンシル(FPC)は、3月5日に発表した「デジタル資産とデジタル台帳技術:金融包摂への道」(参考:PDF)でこのように指摘した。
レポートによると、デジタル資産技術を米国の金融システムに統合することは容易ではないと考えられる。ブロックチェーン技術などの分散型台帳(DLT)を活用して金融包摂を促進するには、政府と民間企業を含む複数のステークホルダー間の協力が不可欠だと指摘している。そのため、公民連携(PPP:Public-Private Partnership)が有効な手段となる可能性がある。
それでも「目的の相違や規制基準の違いが協力の妨げとなる可能性がある」とレポートは指摘している。
レポートによると、多様なデジタル資産のアクセスポイントを備えた中央集権型のシステムを構築することで、金融サービスが十分に行き届いていない消費者にもデジタル資産を利用しやすくできる。ただし、その設計は「文化的および状況的に適した形」で行う必要があると指摘している。
「デジタル資産は決済を変革する可能性を秘めていますが、その実現には慎重かつ協力的なアプローチが必要です」と、評議会のデジタル資産作業部会の議長を務めるボー・バーグ氏はプレスリリースで述べた。
「本レポートは、金融機関、政策立案者、業界リーダーがデジタル資産を責任を持って効果的に活用するための指針となるものです」と彼は続けた。
トランプ政権とデジタル資産政策
デジタル資産の活用促進は、ドナルド・トランプ大統領の2期目政権における優先課題の一つとなっている。一方で、多様性はそれほど重視されていない。
トランプ大統領は、1月の就任初週にデジタル金融技術を支援する大統領令に署名し、政権向けの提言を行う作業部会の設立を指示した。
また、自身が運営するソーシャルメディア「Truth Social」で発表した国家戦略的暗号資産準備(National Crypto Reserve)の対象となる仮想通貨のリストを公表した。
なお、トランプ大統領は1月に「急進的で無駄な政府のDEIプログラムおよび優遇措置の廃止」と題した大統領令にも署名し、連邦機関におけるDEI推進の取り組みや政策を撤廃する方針を打ち出した。
トランプ大統領は暗号資産(仮想通貨)業界に対する見解を大きく変えている。2021年のFox Businessのインタビューでは、ビットコインを「詐欺」(scam)と呼び、米ドルの価値に悪影響を及ぼす可能性があると批判していた。
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