「氷河期世代」はなぜ報われないのか 国の支援では解決できない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(2/8 ページ)
「就職氷河期世代」に対する国の支援策が話題になっている。しかし本当に必要なのは、その場しのぎの「支援」ではなく……。
支援があってもほとんどの人が変わらないワケ
もし仮に先ほどのニュース番組で取り上げられたような「報われない人生を歩んできた40〜50代」に対して経済的支援、キャリアアップ支援、就職支援などの手厚いサポートをしたとしよう。今の日本にそんな財源はどこにあるのかという問題はあるが、潤沢な予算が就職氷河期世代対策に注ぎ込まれたとしよう。
それによって正社員になれたとか、収入が上がったという人も多少は増えるかもしれない。しかし、ほとんどの人は支援を受けた後も、今とそれほど変わらない人生を送るはずだ。この人たちの能力や努力が足りないという話ではない。
人口減少によって、日本の「働き先」もどんどん減少しているからだ。
経済産業研究所が公開しているコラム『企業も少産多死の日本 〜画一的中小企業政策の終焉〜』で端的に説明されているので引用しよう。
日本全体の企業数は、1990年を100とすると、2005年には82、2015年には74にまで減少した。(中略)2040年までの企業数、従業者数をシミュレーションした結果によると、企業数は、今後10年でさらに減少し、1990年を100とすると、2025年(予測)には58と半減する。
これだけ会社が減れば当然、雇用も減る。この状況を分かりやすく例えるなら、今の日本は「イス取りゲーム」で、プレーヤーの数に対してイスが圧倒的に少ない状態だ。座れないで途方に暮れている人を「一緒にイスを探しましょう」「イスに早く座れるように練習しましょう」と支えたところで意味はない。
つまり、国が本当に手を付けなくてはいけないのは、このイス取りゲームの環境を根本的に変えて「あぶれた人が座れるイスを増やす」ことなのだ。
「いやいや、確か今の日本は人手不足だったろ」という人も多いだろうが、それは介護、建設、農業などのいわゆる「不人気業界」に限定した話だ。給料が安くて体力的にもハードなので、40〜50代の就職氷河期世代も足が遠のいている。だから「外国人労働者」を拡大せよという話になっているのだ。
ちなみに、この問題も「イスを増やす」という視点で考えればやるべきことは見えてくる。介護、建設、農業など「人手不足業界」の最低賃金をしっかりと引き上げ、外国人労働者への依存度を低下させるのだ。ハローワークの紹介やリスキリングより、低賃金と苦しむ就職氷河期世代にとってはそちらのほうがよほどありがたい。
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