「氷河期世代」はなぜ報われないのか 国の支援では解決できない、これだけの理由:スピン経済の歩き方(8/8 ページ)
「就職氷河期世代」に対する国の支援策が話題になっている。しかし本当に必要なのは、その場しのぎの「支援」ではなく……。
国が本気で促進すべきは「企業規模の拡大」
もちろん、中小企業経営者たちに悪気はない。自分とその家族が平和に豊かに暮らせるように「ファミリービジネス」を守っているだけだ。
このように日本には、中小企業の安定と平和のため、国の経済成長に不可欠な「賃上げ」と「産業の新陳代謝」が犠牲になっている、という構造的な問題がある。
人口が右肩上がりで増えていた時代は、イケイケドンドンでうまくごまかせた。しかし、出生率が低下して生産年齢人口が減少していくと、この構造的な問題が一気に表面化する。そのマイナス面が直撃したのが、第2次ベビーブーマーも含む就職氷河期世代だったというワケだ。
こういう本質的な議論にならない原因の一つに、「就職氷河期」というネーミングがあると思っている。氷河期というのは基本、人智の及ばない天災みたいなものだ。だから、「就職氷河期世代」を被災者のように考えて、国が被災者支援をするのと同じように、支援をしてあげるべきだと考えている人がたくさんいる。
しかし、これまで述べたようにこの世代が就職できなかったのは、天災などではなく、「国民の数」が引き起こした科学的な現象なのだ。だから、この問題も科学的に解決するしかない。
貧乏クジばかりを引いてきた、われわれ世代に本当に必要なのは、その場しのぎの「支援」などではなく、この国が人口増時代に築いた産業構造を、根本的に見直す改革なのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。窪田順生のYouTube『地下メンタリーチャンネル』
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受
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