パナソニックは「神様」の呪縛から脱却できるのか 新たに示した組織再編の課題(3/5 ページ)
パナソニックホールディングスが、新たな組織再編を実施すると発表した。同社の歴史は、そのまま「組織再編の歴史」ともいえ、今度の施策がどのような結果を生むのか注目が集まる。何よりの課題は「神様」である松下幸之助の呪縛から脱却できるかといえそうだ。
1933年に「事業部制」を採用
その始まりは、創業者で「経営の神様」として知られる松下幸之助氏の時代にまでさかのぼります。幸之助氏は、1933年に組織の拡大に伴い独自の発想でいち早く事業部制を思い付き、これにより培われた部門ごとの「自主独立経営」の精神はパナソニックのDNAとして長く受け継がれています。
その後、大阪万博が開かれた1970年を機に、わが国の景気が急速に後退し、第1次オイルショックが追い打ちをかけた後の1975年に幸之助氏は「総括事業本部制」という事業部制を発展させた組織改革を断行しました。これは48の事業部を3つの総括事業本部に再編し、3人の副社長に管理させる、というものです。
景気減速の危機下で、幸之助氏が直接3幹部に指示を出す「番頭経営」を形作った組織改革です。幸之助氏の強いリーダーシップで組織を活性化させ、狙い通り効果を発揮しました。こういった幸之助氏の経営手法は「トヨタ生産方式」とともに「日本的経営」の代表的成功例とされました。
これらの成功体験が、戦後の経済成長が途絶えたバブル経済崩壊後にパナソニックの経営を翻弄することになります。
金融危機後の不況下にあった2001年、時の中村邦夫社長は事業部制における管理業務等のダブりが非効率であるとして廃止。しかし2013年には、リーマンショックの後遺症と円高不況による過去最大の赤字決算を受け、津賀一宏社長が「原点回帰」の旗頭として事業部制を復活させます。
2017年に事業部制はより強固なカンパニー制に移行しますが、大きな成果を見せることがないまま2021年に廃止。2022年4月に持株会社制に移行して現在に至っているのです。
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