絶好調「オーケー」を倒せるか トライアル&西友タッグが秘めている巨大な可能性:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/5 ページ)
小売業界再編のきっかけにもなりそうだった「西友」の売却先がトライアルHDに決まり、大きな話題となった。スーパーとしては「新参」であるトライアルだが西友との相性は良さそうだ。流通業界に詳しい筆者が、その可能性を解説する。
相互補完によって、「オーケー」とも戦えるようになる
トライアルとしては、西友で評判の良いPB「みなさまのお墨付き」を全国の店舗に導入できるメリットもある。みなさまのお墨付きは、一般消費者のうち80%以上が支持したものだけ商品化しており、激安ではないものの値ごろ感がある。「質販店」を目指した西友の伝統と、EDLPのウォルマート流が融合した成功例である。
その他、西友は2023年4月から、生鮮三品(青果・畜産・水産)の新ブランドとして「食の幸」も立ち上げている。バイヤーが味と品質にこだわった商品を選定し、顧客が求めやすい価格で提供する狙いがある。近年は精肉店出身である「ロピア」のような、生鮮に強みを持つ強力なライバルも出てきた。生き残りには重要なテーマであり、トライアルにとって食の幸も獲得できるのは大きなメリットだろう。
競合でいえば、銀座に進出して成功を収めている「オーケー」が大きな存在感を出している。同じ首都圏のEDLPを売りとするスーパーでも、これまで西友は駅前、オーケーは郊外と立地が異なっていた。しかし、近年オーケーは勢力を拡大しつつある。
オーケーは、同じ商圏ならば競合店と比べて最も安く売るのをモットーとしている。西友としては、トライアルの激安商品を置くだけで、オーケーなどの競合ディスカウンターに対して、近隣に店舗をつくらせない抑止効果を持つだろう。トライアルの超絶安価な商品まではなかなか店頭に並べられないはずだ。
価格破壊商品で集客しつつ、みなさまのお墨付きや食の幸のようなコスパの良い商品を売っていく――トライアルと西友の相互補完が実現すれば、低価格・高品質のEDLPで成長して顧客満足度も高いオーケーも、うかうかしていられないことになるだろう。
トライアルHDは、IT化を主導してきた創業家の長男・永田洋幸取締役が4月1日付で社長に昇進する。M&Aを推進してきた亀田晃一氏は副会長となる。「西友から学ぶ点は多く、シナジー効果を最大化したい」とトライアルHD経営陣は強調していた。新体制で臨む、トライアルと西友の補完し合いつつ成長するビジネス展開に期待したい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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