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なぜ、この料理を万博で? 各国の“食”に見るブランディング戦略(3/5 ページ)

万博で提供される各国グルメ。その背景にあるブランディング戦略に目を向けてみると、違ったものが見えてくる……。

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現地“風”ではなく、本場の味を追求

 アレンジを最小限にとどめ、本場の味を追求した料理を提供する――そんなコンセプトを掲げているのがシンガポール館だ。


シンガポール館内にあるカフェ(筆者撮影)

 シンガポール館では、調味料をシンガポールからわざわざ取り寄せ、現地そのままの味を再現する工夫をしている。輸入する際に関税がかかるなど、手間もコストもかかったものの、「現地風ではなく、本場の味を」をモットーに、あえてその道を選んだという。

 シンガポール館の料理やお酒を手掛けたのは、福岡を拠点に活動する料理人・眞貝友也さん。普段はイタリアンを手掛けることが多く、シンガポール料理をプロデュースするのは今回が初めてだったという。


シンガポール館内では、ライトショーを見ながら飲めるオリジナルドリンクを販売している(筆者撮影)

 2024年にシンガポールを訪れ、現地の料理を試食。何が日本人に合って、何が合わないのかを丁寧に探りながら、シンガポールの関係者とともに、万博で提供する料理を作り上げた。

 苦労したのは日本人とシンガポール人との味の好みの違いだ。例えば、ココナッツミルクをベースにスパイスの辛みをきかせた濃厚なスープが特徴の麺料理「ラクサ」は、本来その上に「ラクサリーフ」というハーブを乗せるのが一般的。しかし、ラクサリーフはドクダミのような独特の苦みと香りがあり、日本人にはなじみづらいと判断した。その代わりにパクチーをトッピングすることにしたという。


アレンジを加えながらも、現地の味を提供することを目指す(提供:©The Singapore Pavilion, Expo 2025 Osaka)。

 ただ、こうした“ちょっとしたアレンジ”も、現地のシンガポール人に試食してもらい、「これならOK」と納得したものだけを採用している。

 「料理とパビリオンの雰囲気でシンガポールらしさを味わってもらい、現地に行ったような気分を感じてもらうこと。それがきっかけで、実際に足を運ぶ人が増えればうれしい」と眞貝さんは話す。

 食のアカデミー賞とも称される「Asia's 50 Best Restaurants 2025」では、シンガポールから7つのレストランがトップ50にランクインしている。国土の小ささの割には、グルメがぎゅっと凝縮されたシンガポール。その魅力を、万博を通じて伝えようとしている。

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