物流システムを「いきなり本格導入」、あえて試用しない理由とは? 東開物流、DXで業績向上
東開物流(東京都大田区)は、経営体制の刷新と物流DXの推進により、業績向上と組織改革を実現している。どんな改革が、成果につながったのか?
スポーツアパレル輸送などを手掛ける東開物流(東京都大田区)は、経営体制の刷新と物流DXの推進により、業績向上と組織改革を実現している。
同社代表取締役の北村篤氏は前経営陣から9年前に経営を継承。以来、変化への迅速な対応と、タイミングの良い投資を積極的に行ってきた。また、組織改編やグループ会社の設立、M&Aを積極的に進めながら、最新のデジタル技術導入で業務効率化を図っている。
どんな改革が、成果につながったのか?
同社は1997年8月に設立、倉庫内オペレーションと運送業務を一体化したサービスを提供している。従来は投資に消極的な組織だったが、経営権移行後は積極的な投資へと舵を切ることで、1年半後には年商は2倍、利益率も5〜6%アップという業績向上を実現した。
同社は組織改編の一環として分社化を推進。グループ経営体制を構築した。グループ会社の東通や奥野運送などの子会社を次々と設立するとともに、大阪にも拠点を設け、関東と関西を結ぶ物流ネットワークを構築した。これにより「長距離から地場配送への切り替えがスムーズに」なり、運行パターンの最適化も実現した。
グループ会社が増えるにつれ管理の難しさに直面した同社は、デジタル技術の活用へと舵を切った。もともと導入していたシステムはあったのだが、リアルタイムで運行がモニターできない、一度に1人しかシステムに触れないなどの課題があったという。しかしながら、同社の実情や、実現したいソリューションが見つからないという状況が続いていた。
しかし2024年9月の「国際総合物流展」で出会ったシステムベンダーのアセンド(東京都新宿区)の運送管理システム「ロジックス」を目にし、10月から導入を進めた。システムを導入する際には部分的な導入など、試用期間を設けることが多いが、東開物流はスピード感を持った導入が必要として、いきなりの本格導入を選択した。
まだまだ現場とのすり合わせが続いており、ベンダー伴走で運用と改修を行っているが、新システム導入により、「1つのPCで全社の配車状況がリアルタイムに見える化できる」ようになったという。また、「システムを入れることで現状の人数でより多くの運行管理、配車が行えるようになったことで、業務の拡大を目指すことが可能になった」。これまではExcelファイルを使って感覚によって行っていた営業と配車のすり合わせも、両担当者がそれぞれに車両の余力や受注をリアルタイムで確認しながら行えるため、確度が高く、現状に合った配車をよりスムーズに行うことができるようになっている。
これからはさらに、1運行当たりの原価や運行時間などのデータを参照しながら、より利益率を高めていくことを目指す。また、「勤怠管理や請求業務も含めて一括管理できればさらに効率化が進む」と今後の展望を語った。
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