再び動き出した「地銀再編」で進む「二極化」 SBIも頼れない今、各行は何をすべきか(3/4 ページ)
コロナ禍の終息や「金利ある世界」の到来で、一時は落ち着いていた地銀再編が再び動き始めている。金融庁の思惑や各行が求められているものを有識者が解説する。
なぜ地銀は「ダメ」になったのか
このように厳しい目が向けられる地銀を巡る経営の課題は、一体どこにあるのでしょう。
まず何より、地銀は同じ銀行業であるメガバンクと比べて、収益性が低い点が最大のネックです。その主因は、旧来の利ザヤで稼ぐ収益性が低いビジネスモデルにいまだに頼っている地銀が多い点にあります。この状況下で1つの県に複数行が乱立していれば、スケールメリットの欠如という問題も加わります。手っ取り早いのは「1県1行体制」の確立であり、金融庁は再編の後押しを優先課題としているものと思われます。
とはいえ再編だけでは問題は解決しません。最大の課題は、利ザヤビジネスからの脱皮を、いかに進めていくかです。理想形は、地銀の持ち株会社が傘下に銀行と地域事業会社、公益事業などを持つ「地域創生ホールディングス」の実現でしょう。もちろん一朝一夕に事が進むものではありませんが、まずは依然として残る政策株投資を地元有望企業への投資に転換しての収益拡大などが、その有力な足掛かりとなるはずです。
同時に、これから勝つためのビジネスモデルには、AIの活用を含めたDXが不可欠です。一方、野村総研による約170の地域金融機関を対象とした調査結果では、9割近くがいまだに決算書を紙ベースで受け取っているという寂しい結果も出ています。金融庁の企業ヒアリングでは、地銀の取引先中小企業へのDX化支援が首都圏のITベンダーの代理店的業務に留まっているとの声も多く聞かれており、道は険しいといえるでしょう。
冒頭に挙げた最近の経営統合、包括業務提携は基本的に有力行のケースばかりです。このように着々と次なる一手を打つことで一歩先をゆく有力行の姿勢と比べ、依然として動きがない第二地銀を中心とした非有力行からは、手詰まり感さえ感じさせられてしまいます。
そのような非有力地銀を支援する動きに関しては、SBIホールディングスが2019年の島根銀行への資本注入を皮切りに、経営状況が厳しい「限界地銀」の救済プロジェクトとして注目を集めた「地銀連合構想」が、その後どうなったのかも気になるところです。
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