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新リース会計基準対応の鍵は「契約の洗い出し」と「監査法人との協議」 対象を狭くするロジック構築術とは

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 日本の会計基準を開発する企業会計基準委員会が「リースに関する会計基準」(以下、新リース会計基準)を2024年9月に公表して約半年がたった。同基準の強制適用が2027年4月に迫る中、適用対象となる会社法上の大会社(貸借対照表において資本金が5億円以上または負債の合計が200億円以上)に該当する株式会社と上場企業、その関連会社は、対応に向けた作業を本格化させているところだろう。

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プロシップ 巽俊介氏(取締役 システム営業本部 副本部長)

 「当社の調査では、対象企業全体の約2割がすでに適用作業に取り組んでおり、約6割が経営層などからの指示を受けて“重い腰”を上げ始めました。残る2割は、影響が少ないと判断して直前まで対応しない層で、まだ動き出していないようです」と解説するのは、プロシップの巽俊介氏だ。

 巽氏は、新リース会計基準の対応作業は以下のロードマップに準じて「現状把握、影響分析」「会計方針の検討、策定」「業務設計、システム導入」「運用トライアル、運用」の4つのフェーズで進めるべきだと話す。

 「新リース会計基準に対応する上で必要なタスクは多く、いずれのフェーズも完了に半年以上を要します。これから作業に着手するのであれば、2025年6月までに『現状把握、影響分析』を、2025年中に『会計方針の検討、策定』、2026年9月までに『業務設計、システム導入』を終えることが期限の目安になります」

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(提供:プロシップ)《クリックで拡大》

 適用に向けた作業の中で多くの企業が直面している課題が「知見の乏しさ」だ。新リース会計基準対応はどの企業にとっても初めての経験。「何から始めたらよいか分からない」と頭を抱える担当者も多いだろう。

 巽氏は「対象企業の動きは、IFRS16号対応時と酷似しています。疑問の全てを解消し切れないままシステム整備に突入したため、要件の見直しなどの手戻りが多くの企業で発生しました」と説明する。

実践的な知見を提供する方針整理サイト

 知見の乏しさや作業の煩雑さもあって、対象企業の2割はコンサルティング企業のサービスを利用しているという。巽氏が危惧するのは、自社だけで対応する、あるいは計画している残り8割の動向だ。

 「当社が開催するWebセミナーには、視聴者から『何から着手すべきか』『他部門をどう巻き込むべきか』など、基礎的な質問が数多く寄せられています。このまま作業するとIFRS16号適用時と同様に手戻りが生じるリスクが高く、期日までの対応完了が危ぶまれます」

 そのような企業が円滑に対応作業を進められるように、プロシップは、同社の「ProPlus」や「影響額試算ソリューション」の利用者に向けて、「新リース会計基準対応のための知恵袋」と位置付けられる方針整理サイト(以下、本サイト)を5月に開設した。4つのフェーズに必要なタスクのリストや作業手順、作業用ツール、成果物のテンプレートなどを網羅的に無償で提供する。

 「当社はIFRS16号対応で100社を超える企業を支援しました。その経験から、企業が新リース会計基準の対応で何をすべきかを熟知しています。本サイトはそうした知見を多角的に提供して新リース会計基準対応をしっかりと後押しします」

 4つのフェーズの中でも巽氏が「システムの手戻り発生を食い止める上で重要」と話すのが、要件を確定するフェーズ1の「現状把握、影響分析」とフェーズ2の「会計方針の検討、策定」だ。ここからは、プロシップの本サイトで公開されている「2つのフェーズを効率良く進めるためのノウハウ」を解説する。

フェーズ1:漏れのないリース把握のためのポイントとは

 フェーズ1で実施すべきタスクは24個ある。プロシップが支援サイトで公開しているタスクリストにはそれぞれの達成基準が示されており、「基準を満たすことで、漏れなく対応できます」と巽氏は話す。

 フェーズ1で特に意識すべきポイントが「調査票に記載する項目の選定」だ。オペレーティングリースは現場主導で利用されており、洗い出しの工程には他部門の協力が欠かせない。各部門に調査票の記入を依頼することになるが、各部門の従業員は新リース会計基準の知識がほとんどない。そのため、基準書に記された専門用語で「リース」を説明して該当する契約の記入を依頼するだけでは、判断ミスや記入漏れが生じる可能性が高い。

 また、新リース会計基準を正しく理解することでリースの対象から外せる契約もある。リース識別のフローが重要となるが、そのポイントは以下の3つだ。

判定1:資産の特定(特定された資産があるか)

判定2:独占利用(顧客が、資産の使用によってほぼ全ての経済的利益を得る権利を有しているか)

判定3:自由な利用(資産の使用方法を指図する権利を誰が有しているか)

 「判定基準が一つでも当てはまらない契約はリースに該当しない可能性があります。新リース会計基準の知識がない人も理解しやすい言葉でまとめることで、各部門の負担は大幅に軽減されるはずです。当社は調査票のひな型も用意しています。調査票の回収後、経理部側で契約書に記載のない例外規定の対象の有無や延長、解約オプション、割引率などを追記して完成させます」

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分かりやすい言葉でまとめたフローを提示することで、抜け漏れなく契約を確認できる(提供:プロシップ)《クリックで拡大》

 リースの洗い出しで見過ごしがちなのが「実質リース」だ。契約書上はリース契約や賃貸借契約ではないものの、実質的に貸し借りを行っている取引のこと。ネットワークサービスのサーバや専用線、倉庫保管サービスの在庫管理設備、ガスや石油などの貯蔵タンク、パイプラインなどが挙げられる。契約書をさかのぼって、それらがリースに該当するか否かの確認も忘れてはならない。

 リースを効率的に把握するためには「調査開始前にグループ企業全体の調査方針を定めることもポイントだ」と巽氏は話す。会社ごとに「親会社と同様に調査を実施する」「不動産だけを対象とする」「現時点での調査は見送る」などを判断して、監査法人にその妥当性を認めてもらう。

フェーズ2:リースか否かは監査法人との協議次第

 フェーズ2の「会計方針の検討、策定」で実施すべきタスクは、「会計対応方針の暫定的な決定」から「システムベンダー選定」までの9つ。このうち巽氏が最重要と力を込めるのが「監査法人との協議」だ。

 新リース会計基準は原則、全てのリース契約についてその資産と負債の貸借対照表への計上を求めている。リース数が多いほど管理の負荷や煩雑さが確実に増す。

 「IFRS16号に対応した企業のうち、その後の業務を円滑に進められている企業に共通するのが、貸借対照表への計上を業務に大きな影響を与えるリースに限定している点です。当然、経理、会計業務はそれだけ効率化されます」

 監査法人は網羅性を重視して、リースに該当する可能性がある全ての契約の管理を求める場合が多い。しかし、IFRS16号に対応した企業を分析すると「社宅用の賃貸契約」などをリースに含めている割合は半々だという。

 「つまりはリースに該当するかどうかは、監査法人との協議次第だということです。適用後の業務効率化を見据えて『なぜリースに該当しないのか』を監査法人に説明できるロジックの構築に力を入れるべきです」

 巽氏は「商業施設などのテナント契約」を例に説明する。テナント契約は一般的に賃貸契約としてリースと見なされるが、運営会社は集客力のある店舗に立地の良い区画を賃貸するため、業績に応じて既存契約者に他区画へ移るように指示するケースもある。運営会社の都合で移転しなければならない場合、一般的に資産である区画の特定は難しく、先述したリース契約の判定フローの「資産の特定」を満たさないことになる可能性が高い。

 親会社が保有するビルのフロアを子会社が借りる場合も同様だ。親会社が子会社に対してフロアの移動を指示できる状況であれば、子会社はリース外と主張できる可能性がある。

 「監査法人は、第三者としての独立性確保や企業経営への過度な関与を避けるために、このようなアドバイスはできません。経理、会計部門としては、監査法人との厳しい協議は心理的に避けたいところでしょう。ただ、リース外として合意が得られた成果は今後の業務に大きく影響します。積極的に協議する価値があることは明らかです。本サイトでは、そのロジック構築のヒントやIFRS16号対応時の事例など、監査法人との協議を支援する情報なども豊富に発信しています」

 大多数の企業にとって新リース会計基準の対応作業はこれからが本番だ。プロシップが開催するWebセミナーや本サイトを通して、IFRS16号対応で同社が蓄積した“技”や“ノウハウ”を学び、円滑な対応や効果的な推進に生かしてほしい。

新リース会計基準に対応したSaaS型固定資産管理ソリューション「ProPlus+」

新リース会計基準の適用に向けた事前整理からシステム導入、利用局面まで一貫したベストプラクティスを提供します。

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