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イオンを凌駕 ドラッグストアが“郊外の覇者”になったワケMerkmal(2/2 ページ)

地方の風景における「ドラッグストア」の急成長は、モビリティ環境の変化と深く結びついている。イオンの店舗数を上回る2万3041店舗を誇るドラッグストア業界は、低価格の商品と高利益率商品を巧妙に組み合わせ、地域密着型のビジネスモデルで急速に拡大。高齢化社会に対応した地域医療拠点としての役割も果たし、今後の再編と競争激化が予測される。

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医薬品専門店からの脱却

 この業態では、専門性を保ちながら食品分野での競争力強化を図るという難しいバランス経営を求められるが、ドラッグストア各社は成功している。

 その要因は、医薬品や化粧品といった高収益商品を扱うことで、食品の低価格販売を実現できる収益構造を持っている点だ。また、調剤薬局を併設することで、地域のヘルスケア拠点としての役割も果たしている。

 ドラッグストアは、医薬品や化粧品の専門店から、食品や日用品を幅広く取り扱う「総合業態」へと進化を遂げている。特に地方では、食品スーパーの撤退や高齢化による買い物困難者の増加という社会課題に対応し、医療や健康という専門性を持ちながら、日常生活に必要な商品を提供する新たな業態として定着している。

 この流れのなかで、各チェーンは「総合業態」の店舗出店を加速させており、同一地域内に複数の店舗を集中的に出店する「近接出店戦略」を採用している。その多くは大型店だ。日本チェーンドラッグストア協会の調査によると、2023年度の全国総店舗数2万3041店舗のうち、150坪以上300坪未満の大型店が全体の42.9%を占めている。この結果、かつての大型イオンに代わり、地方の風景にはドラッグストアが乱立するようになった。


調剤薬局を併設し、地域のヘルスケア拠点としての役割も。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

イオンがドラッグストアの成功を取り込み?

 一見、この状況は過当競争を引き起こしているように見える。

 例えば、中日新聞2023年11月20日付電子版では、人口2万人に満たない石川県羽咋(はくい)市の市道沿線約2キロメートルに4店舗目となるドラッグストアの出店が決まったことを報じている。取材を通じて、新規参入するコスモス薬品は「商圏人口1万人でも成り立つ」と判断し、クスリのアオキは「生鮮食料品と処方せんで差別化できる」、ゲンキーも「よい商品を提供することに変わりない」というコメントを掲載している。

 実際、過当競争に見えても、各社は収益を見込んでいる。

 駒木伸比古氏の論文「愛知県におけるドラッグストアの立地分析 チェーンにおける商圏特性の違いに注目して」(『経営総合科学』104)によると、愛知県の主要チェーンの店舗は、最低でも80%以上が医療施設から徒歩圏内(500メートル以内)に立地しているという。これは、各社が高齢化社会における地域医療拠点としての役割を意識した戦略を取っていることを示している。

 その結果、過当競争が指摘されるなかでも、業界は成長を続けている。特に調剤部門では、2015年度の7158億円から2023年度には1兆4025億円と、約2倍の成長を実現している。

 将来的な競争激化への懸念が高まっているなか、ドラッグストア業界では再編の動きが加速している。その中心的な役割を果たしているのがイオンだ。

 2024年2月、イオンの子会社で業界首位のウエルシアHDと、イオンが13.59%を保有する2位のツルハHDが経営統合を発表した。イオンはさらにツルハ株を追加取得し、グループ会社化する方針で、この統合により売上高2兆円超の巨大ドラッグストアグループが誕生する。

 この再編は単なる業界再編にとどまらない。小商圏で成立するドラッグストアの経営ノウハウと、イオンの多様な小売業態の運営力が融合することで、より強固な地域密着型の小売グループが誕生する可能性を示唆している。

 皮肉なことに、地方でイオンの存在感を上回ったドラッグストアの成功が、新たな形でイオンの地域における影響力を一層強化することになるだろう。

 総合スーパーから小商圏型のドラッグストアへと、小売業の主役は変化してきた。

 そして今、ドラッグストアの成功を取り込む形で、イオンはより強固な地域小売グループとして進化を遂げている。

 総合スーパー、ドラッグストア、小型食品スーパーなどはそれぞれの利点を生かし、地域のニーズにきめ細かく対応する新たな小売業態を形成しつつある。

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