マイクロソフト流「AI時代の財務戦略」 10年前に着手、すでに人員増加を抑制
米Microsoftの財務チームは約10年前から、効率化とコスト削減を目的としてAIの導入に着手していたと、モダンファイナンス部門のリーダーであるコリー・フルンチリク氏は述べている。同氏によれば、このDXの取り組みは、過去2年間で「目にもとまらぬ速さで加速している」という。
米Microsoftの財務チームは約10年前から、効率化とコスト削減を目的としてAIの導入に着手していたと、モダンファイナンス部門のリーダーであるコリー・フルンチリク氏は述べている。
同氏によれば、このDXの取り組みは、過去2年間で「目にもとまらぬ速さで加速している」という。
マイクロソフト流「AI時代の財務戦略」
その過程で、財務チームはMicrosoftが自社開発した多くのAIツールを積極的に導入してきた。「私たちは“Microsoftのお客さま”でもあります」とフルンチリク氏は述べる。
同氏はまた、カンファレンス後のインタビューで次のように語っている。「AIは、ほぼ指数関数的に成長を続けるマイクロソフトの業務規模に、人的リソースを増やすことなく対応するための支えとなっています」
「当面の大きな焦点は、テクノロジーを積極的に活用し、非効率を徹底的に取り除くことです」と、フルンチリク氏は話す。「非効率が解消されれば、当然ながら社員の業務余力は拡大します」
この方針は、AIの急速な進化により競争の激化が進む中、効率化を最優先課題として位置付けるテック業界全体の動きとも一致している。多くのテクノロジー企業が、一部の部門で人員削減を進める一方、AI分野への積極投資を進めている。
ロイターの報道によれば、マイクロソフトは5月、コスト抑制とAI関連投資の拡大を目的として、約6000人の従業員をレイオフすると発表した。対象は職種・階層・地域を問わず全社的におよび、2023年の1万人規模の削減以来、最大級のリストラとなる見通しである。
CFO Diveの取材に対し、フルンチリク氏はこの人員削減が財務部門に影響を与えるかどうかは自分には分からないと述べた。「しかし、財務部門にはまだまだやるべき仕事が山ほどある」
AI主導の覇権争いで先行 財務領域にもCopilotを展開
Microsoftは現在、AI市場の主導権を巡り、他の大手テック企業との熾(し)烈な競争を繰り広げている。2023年以降、同社は「Copilot」(コパイロット)シリーズの製品を次々に発表し、Microsoftの各種アプリケーションやサービスに統合する形で提供してきた。これらのツールは、ユーザーの業務遂行を支援することを目的としている。
2024年初頭には、Microsoft 365のExcel、Outlook、Teamsといったアプリに統合された「Copilot for Finance」(コパイロット・フォー・ファイナンス)を発表。これは、財務プロセスをよりシームレスかつ効率的に進められるよう支援する機能であり、財務部門向けに設計された生成AIの活用例の一つである。
さらに2024年秋、同社は業務タスクを自律的に遂行できる「AIエージェント」10種を発表し、その中には財務関連の機能を持つ2つのツールも含まれていた。こうした動きは、単なる業務支援を超えたAIによる業務自動化の実現を視野に入れたものである。
Microsoftはまた、2025年度中におよそ800億ドル(約12兆円)を、AI対応のデータセンター整備に投資する計画であると、同社副会長兼プレジデントのブラッド・スミス氏が1月に明らかにしている。この巨額投資は、大規模言語モデル(LLM)の訓練と、AIおよびクラウドベースのアプリケーション展開のための基盤強化を目的としたものだ。
なお、4月にCFO Diveが同社に確認したところによると、一部のAIデータセンタープロジェクトで若干の調整はあったものの、800億ドルの投資目標は依然として達成見込みであると、Microsoftの広報担当者が述べている。
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