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色褪せた「夢のマイカー」 自動車CMの変遷と次の一手は?Merkmal(2/2 ページ)

高度成長とともに街を駆け抜けた名車たちは、テレビCMを通じて時代の空気を映し出した。視聴率30%超のゴールデンタイムに流れた映像は、年齢も性別も越えて国民に自動車への憧れを刷り込んだ。だが、2020年代のテレビは、企業不祥事と業績不振のニュースばかりだ。かつての熱狂は、どこへ消えたのか――。

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車が「憧れ」ではなくなった2000年代 テレビCMはどう変わった?

 バブル崩壊後も経済成長は模索された。さまざまな産業が若い女性をターゲットに市場開拓を図り、自動車メーカーも例外ではなかった。1993年、ホンダ・トゥデイは牧瀬理穂を起用し「新しいトゥデイなのだ」というCMを放送した。1994年には小沢健二のBGMがヒットしたトヨタ・カローラIIのCMも登場し、若い女性の自由で気ままなライフスタイルをかわいく描いた。

 1990年代は自動車保有台数がまだ伸びており、テレビCMの存在感も強かった。

 2000年代に入ると自動車保有台数の増加は鈍化し始めた。長引く景気低迷で若者は生活に手いっぱいとなり、自動車は憧れの品ではなくなった。リーマンショックはその傾向を決定的にした。

 それでも2007年のダイハツ・タントのCM「祝子育て満開」は子育てファミリーの支持を集めた。しかし、かつてのような影響力を持つテレビCMは姿を消した。国内市場の伸び悩みを受け、メーカーは販売の重点を海外に移していた。

 近年印象的だったのは、2015年から放送された日産の「やっちゃえ日産」だ。初代の矢沢永吉のイメージが「やっちゃえ」にぴったりはまった。

 近年は企業メッセージCMが増えている。トヨタの「トヨタイムズ」では自動車に限らずさまざまな企業活動を取り上げている。オンライン社会となった今、テレビCMが大きな影響力を持つとは言いにくい。しかしネットCMにおいても、国内メーカーで目立つ存在感のあるCMはあまり見られない。


写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

 現在も自動車産業は日本の基幹産業であることに変わりはない。ただし、かつての盛況期に比べ、国民の関心は薄れている。

 振り返れば、自動車のCMは経済成長とともに歩んできた。時代の豊かさを象徴するイメージを映し出し、若い世代にも強い共感を与えてきた。これは販売面だけでなく、メーカーの創造力も支えていたのだろう。

 いま日本は低成長の時代にある。消費の志向も変わり、価値観も大きく揺れ動いている。現在の豊かさは、かつてのように明快ではない。自動車という概念そのものも変わりつつある。

 これからの時代、多くの人に響く「新しい豊かさ」の像を描けるかどうか。そこに自動車メーカーの未来が懸かっている。

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