人手不足倒産、2年連続で過去最多更新 特に深刻な業種は？：帝国データバンク調べ

従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」が増加している。帝国データバンクが調査を実施した。

[秋月かほ，ITmedia]

　従業員の退職や採用難、人件費高騰などを原因とする「人手不足倒産」が増加している。帝国データバンクが調査した結果、人手不足倒産は2025年上半期（1〜6月）に202件発生。前年同期（182件）から20件増加し、過去最多を2年連続で更新した。

帝国データバンクが「人手不足倒産の動向調査」を実施（出所：写真AC）

人手不足倒産 年上半期の推移（出所：プレスリリース、以下同）

人手不足倒産、特に深刻な業種は？

　業種別で見ると、「建設業」が54件（前年同期比＋1件）で過去最多となり、「物流業」（28件、同＋1件）が続いた。以前から深刻な人手不足が続いている業種で倒産が多発しており、いわゆる「2024年問題」が懸念されていた建設業と物流業で全体の40.6％を占めた。

　加えて、「老人福祉事業」（12件、同＋10件）、「労働者派遣業」（11件、同＋10件）、「受託開発ソフトウェア」（7件、同＋5件）といった労働集約型のサービス業が、全体の件数を押し上げた。

企業が設備投資を予定している内容

　人手不足解消に向けての施策を大別すると、従業員数や労働時間などの「労働投入量の増加」か、効率的なアウトプットによる「生産性の向上」のどちらかが必要となる。

　しかし帝国データバンクが実施した「2025年度の設備投資に関する企業の意識調査」における「設備投資を予定している内容」を見ると、「DXの推進」や「情報化関連（IT化、AI活用など）」といったデジタル投資の面において、中小企業は大企業より10ポイント以上低く、大きな開きが生じていた。

設備投資を予定している内容（上位10項目）

　帝国データバンクは「中小企業がデジタル投資に消極的という状況を踏まえると、労働投入量の増加を図るべく人材の確保・定着が一層重要となる。しかし、昨今は転職市場が活発化しており、中小企業は人材の確保で苦戦することが予想される。なかでも、既に人手不足が深刻な労働集約型の業種で人材獲得競争がさらに激化し、人手不足倒産は高水準での推移が見込まれる」とコメント。

　さらに「足元では就業者数は増加傾向にあるものの、少子化の流れを受けて中長期的には減少トレンドに転じると予測される。そうしたなかで、特に中小企業では働き手から『選ばれる企業』となるための独自性・優位性を追求し、その魅力を効果的に発信することが求められる」と指摘した。

　調査の集計期間は2013年1月1日〜2025年6月30日までで、集計対象は負債1000万円以上かつ法的整理による倒産。