「導入しなければ競争に後れ」 米小売リーダーの3分の2が、AI導入を急ぐワケ:Retail Dive
小売業界ではAI導入が急速に進んでおり、信頼性に関する懸念が高まるなかでも、エージェント型AIの活用を模索する企業が多い。これは、業務効率化プラットフォームを提供するMonday.comが、世界の小売業界リーダー1800人以上を対象に実施した調査で明らかになった。
小売業界ではAI導入が急速に進んでおり、信頼性に関する懸念が高まるなかでも、エージェント型AIの活用を模索する企業が多い。これは、業務効率化プラットフォームを提供するMonday.comが、世界の小売業界リーダー1800人以上を対象に実施した調査で明らかになった。
調査によると、業界リーダーの5人に3人以上が「AIが生成する成果物の一貫性や品質に不安がある」と回答。プライバシーやデータ保護、既存システムとの統合の難しさ、顧客離れのリスク、導入コストの高さ、従業員の反発といった障壁も存在する。
それでも小売企業はAIの長期的な可能性を強く信じているようだ。調査対象者の約3分の2は「今後2年間でAIエージェントを導入しなければ競争に後れを取る」と答え、半数以上が「5年以内に顧客対応の大部分はAIが担うようになる」と予想した。
AIは「逆風を和らげ、顧客体験を改善する手段」
経済環境の逆風を背景に、小売各社はコスト最適化と業務効率化を目的にAI投資を拡大している。今年後半の成長鈍化を見込む中、多くの小売企業がAIを「逆風を和らげ、顧客体験を改善する手段」と位置付けている。
スポーツ用品大手アンダーアーマー(Under Armour)は今月上旬に行った2026年度第1四半期決算発表で、AI活用の成果を強調した。
同社創業者であり社長兼CEOのケビン・プランク氏は「AIはデザイン、計画、需要予測など、事業全体に深く統合されつつある」と説明。さらに「部門ごとの縦割り体制から、KPIやリアルタイムデータを共有する協働チームへと移行している」と述べた。
プランク氏によれば、同社は過去2年間でデータ基盤とプラットフォームを整備し、すでに80以上の自動化を導入。これにより、予測価格設定からリアルタイム在庫管理に至るまで、業務プロセスの効率化、商品投入までの時間短縮、実行力の強化を実現しているという。
ただし同社は大幅な減収を受けて事業再編の最中にある。直近の決算では売上高が前年同期比10%減少し、純損失は3億500万ドルにのぼった。
一方、自動車部品小売大手アドバンス・オート・パーツ(Advance Auto Parts)も低迷する業績を立て直すため、テクノロジー活用を強化している。同社は2025年度第2四半期の決算発表で通期見通しを下方修正し、業績もまちまちだったが、店舗体験向上を目的とした新しい品ぞろえ管理フレームワークの導入において、AIをはじめとする先進技術が重要な役割を果たしていると強調した。
社長兼CEOのシェーン・オケリー氏は決算説明会で「これまで手作業で行ってきた品ぞろえ計画に、AIを取り入れることで高度な知見を反映できるようになった」と説明した。
同社はすでに主要30市場で新フレームワークを導入済みであり、今後は主要50市場に拡大する計画だ。オケリー氏によれば、これは同社売り上げの約70%を占める規模で、2025年度第3四半期末までに予定を前倒しで完了する見込みだという。
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