脱・コストセンター BCPを「最高の人材教育」にするための3要素
災害時などの事業継続計画(BCP)に対し、企業内から「直接的な利益を生み出さない『コストセンター』だ」と指摘する声があがるケースもある。しかし、リスクマネジメント支援を手掛けるニュートン・コンサルティング(東京都千代田区)の副島一也社長は「BCPはコストセンターではなく、最高の人材教育の機会である」と指摘する。
本記事の内容は、RX Japan(東京都中央区)が9月10〜12日に開催した「第24回 総務・人事・経理 Week」内で実施された「カイシャのミライ カレッジ」のセミナー「事業を止めない組織づくり──BCPの本質と人材教育の実践」の内容を要約したものです。
災害時などの事業継続計画(BCP)に対し、企業内から「直接的な利益を生み出さない『コストセンター』だ」と指摘する声があがるケースもある。しかし、リスクマネジメント支援を手掛けるニュートン・コンサルティング(東京都千代田区)の副島一也社長は「BCPはコストセンターではなく、最高の人材教育の機会である」と指摘する。
「BCPを進めるためには、経営や会社全体の現場・業務を理解し、非定型業務に対応する能力が不可欠だ。BCPが成功することは、すなわち良質な人材教育の場になる」と副島氏は話す。
BCPを成功させる3要素
副島氏によると、BCPを成功させるためには3つの要素が必要だという。1つ目が「目的」だ。「よくあるのがリスク担当に丸投げしたり、現状課題はないが、何となく不安で見直したりするケースです」(副島氏)。表面的に形を整えるのではなく、「何がやりたいのか」「どこまでできたら良しとするのか」といった目的をはっきりさせることが大切だ。
この目的を決定する際に、副島氏が重視しているのが社長へのヒアリングだ。「BCPが成功する企業、しない企業の決定的な違いは、社長へのインタビューができるかどうか。まず、社長とBCPで何がしたいかを合意することで、社長の意向や感じている経営課題が施策に反映されるようになる。また従業員側にも、社長のプロジェクトを推進しているという意識付けができる」と副島氏は指摘する。
2つ目が「体制」だ。BCPの体制を構築する際に、意思決定権者に必ず現場をよく知っている事業責任者を入れるべきだという。有事に対処しない、当事者ではない事務局などが意思決定すると、事務局が想像で被害想定を考えることになる。その結果、いざ有事が発生した場合に想定が役に立たず、現場が混乱の中で対処しなければならなくなるのだ。
「現場責任者を含めた体制構築が、レジリエンスを長期的に高めるカギになる」と副島氏。現場の当事者が自ら役に立つための活動をし始めるといった相乗効果も見込めるという。
3つ目が「メソッド」だ。副島氏はBCPを進めるに当たり必要なメソッドとして、「全社最適な活動にすること」「文化、事業特性に合わせること」「実践的な手法とすること」を挙げる。
BCPを企業活動から独立したものとして扱ったり、細かいところにこだわりすぎたりすると、事業活動とかけ離れたものになってしまう。企業それぞれの組織風土や文化に合わせ、重要なことにフォーカスするフレームワークから整備すべきだ。
多くの企業は、マネジメント能力やリーダーシップ、課題解決力がある人材を育成したいと考え、さまざまな取り組みを行っている。副島氏は「BCPに本気で取り組むと、経営目線の獲得や会社理解の深化、調整能力や非定型業務への対応力が養われる。実行力のあるBCP活動は人材を育て、会社を強くする取り組みだ」と話す。
一方、忙しい業務の中で、BCPに人材を割く余裕はない企業も多い。「人事部と連携して、BCPを人材教育戦略に位置付けることをすすめる。その際、次世代リーダーの育成や強靭な組織文化の醸成につながることをしっかり説明すべきだ」と副島氏は強調した。
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