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世界の広告費が予想以上の伸びを見せた2つの理由とは?Marketing Dive

「関税前の特需」による広告活動の活発化とソーシャルメディアへの支出増加により、調査会社は2025年予測を意外にも上方修正した。

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Marketing Dive

 英国の調査会社WARCの2025年第3四半期更新レポートによると、世界の広告費は従来の予測を上回る堅調さを見せ、年間で7.4%増の1兆1700億ドルに達する見込みである。

 今回の上方修正は1年以上ぶりで、2025年6月時点の予測から1.2ポイント上振れた。背景には、増加分の9割を取り込むとされるデジタル中心の広告プラットフォームと、WARCが「関税前の特需」(pre-tariff windfall)と呼ぶ一時的な追い風がある。

ソーシャルメディアが最大シェアを獲得

 特に、ソーシャルメディアが新規広告支出の最大シェア(40.6%)を獲得しており、小売以外の検索広告が22.2%、リテールメディア(小売業者が運営する広告枠)が21.5%を占める。Google親会社の米Alphabet、Amazon、Meta(旧Facebook)の3社だけで、2025年の世界広告費(中国を除く)の55.8%を占める見通しだ。


写真はイメージ

 他の調査機関が2025年の広告費見通しを下方修正する中、WARCは数カ月前の予測を上回る成長を示した。今回のレポートは米国に限らず世界全体を対象としており、Amazon、Google、Metaの“三大独占体制”が、厳しい経済環境下でも支配力を強めていることを浮き彫りにした。

「関税前の特需」が広告出稿を後押し

 報告書によれば、多くの企業が第2四半期に積極的な広告展開をした。これは関税導入前の期間に在庫を確保し、値上げ前に付加価値を訴求する狙いがあった。

 第2四半期のソーシャルメディア広告費は前年比20.2%増と、従来予測の12.4%を大きく上回り、約49億ドル相当の上乗せとなった。特に、小売企業のソーシャルメディア広告支出が急増しており、Meta傘下のInstagramで18.8%増、TikTokでは56.8%増を記録した(TikTokの米国での事業継続可否は依然不透明)。

 WARCと米Nielsenの共同調査によると、小売業は現在、両プラットフォームにおける最大の広告主カテゴリーである。さらに、関税の影響を受けやすいテクノロジーや家電分野でも、広告支出の顕著な伸びが確認された。

 WARCのデータ・インテリジェンス・予測部門ディレクター、ジェームズ・マクドナルド氏は次のように述べている。

 「世界貿易の混乱や消費者の購買力低下といった経済的逆風にもかかわらず、ブランドはMeta、Alphabet、Amazonへの投資を強化している。一方で、TikTokのような新興勢力も小規模ながら急速に成長している。パンデミック以降、世界の広告市場はほぼ倍増しようとしており、厳しい経済環境でも広告業界の強靭(きょうじん)性を示している」

Amazon優位のリテールメディア市場、従来メディアは衰退

 リテールメディア市場は2025年に13.7%成長し、1750億ドル、世界全体の14.9%を占めると予測されている。ただし、その成長率は今後数年で平均12.6%まで減速するとみられる。ここでもAmazonが突出しており、リテールメディア広告費全体の35.4%を握る見通しである。

 一方、新聞や地上波テレビ、ラジオといった従来型メディアは衰退が続いている。WARCは、パンデミック後の世界において、デジタルが確実に広告の主導役となったと指摘する。同社は、世界広告市場の名目規模が2027年には2020年比でほぼ倍増し、約1兆3600億ドルに達すると見込んでいる。

米国市場では一部業種に減速懸念

 ただし2025年については、関税の影響を強く受ける業種で懸念がある。米eMarketerの最新レポートによれば、米国では自動車と小売業のデジタル広告支出が貿易摩擦で急減しており、WARCの見方とはやや食い違う。eMarketerは米国のデジタル広告費が前年比9.5%増の3382億7000万ドルにとどまると予測しており、これは従来予測より2ポイント低い。

Marketing Diveを発行するTechTarget社の親会社であるInforma(インフォーマ)は、WARCの株式を保有している。ただし、InformaはMarketing Diveの記事内容には影響を与えていない。

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