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寿司、パスタ、ステーキ……牛丼だけじゃない「松屋」から透けて見える吉野家、ゼンショーとの「差」(3/3 ページ)

牛丼各社は、一本足打法からの脱却を視野に入れた業態開発を進めている。松屋フーズホールディングスも同様にさまざまな業態を開発しているが、一方で先行するゼンショーホールディングスや吉野家ホールディングスと比較して課題も見えている。

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パスタ、ステーキ業態も開発

 松屋フーズHDは2024年1月、パスタ業態店「麦のトリコ」もオープンしている。タッチパネル注文で、店員が届ける形式だ。生パスタ専門店をうたい、パスタのソースはトマト、ミートソース、オイル、クリームの4ジャンルがあり、価格は概ね800〜1300円程度。1000円未満でピザも提供している。店舗のレビューを見ると、コスパの良さが評価されているようだ。


同社初のパスタ業態となった「麦のトリコ」(同前)

 ステーキ店も運営しており、2019年に「ステーキ屋松」を開店した。「いつもの食事にステーキを。」をコンセプトに、現在は東京・神奈川で6店舗を展開する。客単価は2000円未満とみられ「いきなり!ステーキ」よりも低価格帯である。

なかなか店舗数を拡大できていない

 松屋フーズHDは複合店を増やしているが、新業態店の拡大には出遅れている印象がある。すき家を展開するゼンショーHDは回転寿司4大チェーンのひとつ「はま寿司」を展開しており、国内で653店舗を展開し、業界1位のスシロー(659店舗)に迫っている。ゼンショーHDは他にもココスや「ジョリーパスタ」などさまざまな業態を運営している。海外ではすでにテークアウト寿司店を約1万店展開。新規開発とM&Aで業容拡大に努めてきた。

 吉野家は2006年にはなまるうどんの運営会社を子会社化し、うどん事業に参入した。競合の丸亀製麺に差をつけられたが、400店舗以上を展開する。近年は牛丼、うどんに続く第3の柱としてラーメン事業に注力。地場チェーンや製麺業者を買収し、ラーメン店を120店舗以上展開している。

 松屋フーズHDもさまざまな業態店を開発しているが、いずれも数店舗に留まり、規模拡大には至っていない。ゼンショーHDはM&Aも旺盛に行っているが、松屋フーズHDが最後にM&Aを手がけたのは2006年のこと。コバヤシフーズインターナショナルから寿司店など12店舗を取得したもので、翌2007年に始めたすし松は、そのときに取得したノウハウを活用していると思われる。

 新業態のノウハウを一から積み上げるのは時間がかかる上に競合が脅威となる。ヒット作を当てたいのであれば、自社開発だけでなく小規模チェーンのM&Aも視野に入れるべきだろう。

著者プロフィール

山口伸

経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_


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