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中小企業でもできる! 楽天流「小さく仕組み化」から始める成長メソッド

1997年にわずか13店舗、32万円の売り上げから始まった楽天が、現在国内EC流通総額6兆円規模の世界的企業に至った成長の秘訣は何か――。楽天市場のエンジニアリーダーや部長として活躍してきた著者が、楽天で学んだ「仮説→実行→検証→仕組化」を基にしたPDCA-Sを紹介します。

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この記事は、福永博臣氏の著書『楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA−S 』(日本能率協会マネジメントセンター、2025年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 1997年にわずか13店舗、32万円の売り上げから始まった楽天が、現在国内EC流通総額6兆円規模の世界的企業に至った成長の秘訣は何か――。楽天市場のエンジニアリーダーや開発部長として活躍してきた著者が、楽天で学んだ「仮説→実行→検証→仕組化」を基にしたPDCA-S(※)を紹介します。

(※)PDCA-S:PDCA(仮説→実行→検証)に、仕組み化(Systematizing)と横展開(Scale-Out)の「S」を加えてまとめた楽天流の組織成長メソッド。

 DXを含む業務改善を行う際、多くの会社は、日常で使っているツールをはじめ、新しいシステムの導入によって課題を解決しようとします。しかし、新しいシステムを導入するには少なからずリスクを伴います。

 今まで慣れ親しんできたシステムを変えることに反発する社員もいるでしょう。業務フローを見直したり、新しいシステムの使い方を覚えたりする手間を考えると、今のままでよいと感じてしまうからです。


新しいシステム導入による課題解決にはリスクが伴う。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

新システム導入に伴うリスクとは……?

 例えば、社内の仕事の進捗を見える化するために、プロジェクト管理ツールを新たに導入しようと考えたとします。このとき、これまでは個人の手帳や好みのタスク管理ツールを使えていたのに、会社が指定する方法へ変える必要が出てきます。このように、会社全体での取り組みが個々の社員にとってのデメリットになることはよくあることです。

 また、新しいシステムの導入には当然、時間と費用がかかり、会社の財務的な負担になります。ただし、近年ではfreeeやマネーフォワードのような、特定の業務(ここでは経理業務システム)に特化したサービスを個別に契約することができるようになり、昔のように一つの大きな業務システムを自社で開発する必要性は薄れています。これらのサービスを使う場合、システムの構築費用は安く抑えられます。その半面、かゆいところに手が届かないケースもあり、自社に合わせてカスタマイズすることも難しい場合があります。

 とはいえ、自社の業務に合ったシステムを一から作るかどうかは、費用と時間が多くかかりやすいために慎重に判断する必要があります。

 さらに、新たに導入したシステムが自社の業務に合っていないことが、後になって分かるケースもあります。業務改善を目的に導入したはずですが、結果としてそのシステムを使うために別の作業が必要になれば、改善効果は薄れます。場合によっては逆にコストや作業時間が増えることもあるでしょう。このような場合、せっかく導入したシステムが使われなくなることもあり、業務改善の目的も果たされなくなってしまいます。

 こういった理由から、業務改善を行う場合、社員が使い慣れているシステムや特定の業務にちょっとプラス・マイナスすることから始めることをお勧めします。PDCA-Sでは、既存の業務を小さく仕組み化することから始めます。

 企業の業務改善を行う際、必ずしもDXや新しいシステムは必要ありません。必要があれば、その時はじめて検討すればよいと考えます。

 今のシステムや業務で社員が日常的に困っていることを解消するのであれば、社員からの反発もありません。まずは時間と費用を最小限に抑えながら、会社全体で仕組み化に慣れていくところから始めていきましょう。

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