2015年7月27日以前の記事
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目標未達でも焦らない 楽天流、失敗を「次の成功」に変える思考法

成功したことを分析するのと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「できなかったことの分析」です。目標に届かなかった場合、それを単なる「失敗」として終わらせるのではなく、「次にどうすれば達成できるのか?」を考え、具体的な改善策を講じることが大切です。

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この記事は、福永博臣氏の著書『楽天で学んだ 会社を急成長させるPDCA−S 』(日本能率協会マネジメントセンター、2025年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。


 1997年にわずか13店舗、32万円の売り上げから始まった楽天が、現在国内EC流通総額6兆円規模の世界的企業に至った成長の秘訣は何か――。楽天市場のエンジニアリーダーや開発部長として活躍してきた著者が、楽天で学んだ「仮説→実行→検証→仕組化」を基にしたPDCA-S(※)を紹介します。

(※)PDCA-S:PDCA(仮説→実行→検証)に、仕組み化(Systematizing)と横展開(Scale-Out)の「S」を加えてまとめた楽天流の組織成長メソッド。

 成功したことを分析するのと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「できなかったことの分析」です。目標に届かなかった場合、それを単なる「失敗」として終わらせるのではなく、「次にどうすれば達成できるのか?」を考え、具体的な改善策を講じることが大切です。

 プログラム開発でも、最初からうまく動くことはほとんどありません。思った通りに動かない場合は、原因を特定するために「ログ」と呼ばれる記録を確認したり、処理の途中に検証用の情報を差し込んだりして、どこでつまずいているのかを少しずつ明らかにしていきます。そして、「どこが違っていたのか」「どうすれば期待通りの動きになるのか」を見極め、修正を重ねて完成度を高めていきます。


成功分析と同じくらい重要なのが「できなかったことの分析」だ。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

目標未達だった場合にすべきこととは?

 仕事における目標達成も、これと同じです。目標が未達に終わったときは、それを単なる失敗と捉えるのではなく、次にどう改善できるのかを検証することが重要です。

 目標が未達に終わった場合は、次のことを問いかけてみてください。

  • 何が足りなかったのか?
  • どうすれば達成できたのか?
  • どのような環境や仕組みがあれば、実現可能だったのか?

 単に「努力が足りなかった」「環境が悪かった」という結論で終わらせてはいけません。個人の努力に頼るのではなく、環境や社会のせいにするのでもなく、目標に届かなかった原因を分析し、具体的な解決策を考え、実行に移すことが大切です。このとき原因は分かったけれど、どうすればよいか分からない場合もあります。そこで次につながる改善点を洗い出す方法をいくつか紹介します。

(1)できている人をまねる

 目標を達成できなかった場合、「うまくできている人は何をしているのか?」を分析することが有効です。「学ぶ」は「まねる」だからです。

 成功している人は、単に運が良かったわけではなく、何かしらの工夫や努力をしているはずです。その知見を学ぶことで、自分やチームの成果を向上させることができます。その人に連絡が取れるなら、直接「何をやっているのか」「どうやっているのか」を具体的に聞いてみましょう。その100%を自分に取り入れることはできないかもしれませんが、まねできることだけでも取り入れてみると結果は変わってきます。

(2)ノウハウを探す

 もし、うまくできている人に連絡が取れなければ、その人の本やネット記事、YouTubeなどを参考にしてみましょう。セミナーを開催していれば、参加することでノウハウの吸収だけでなく、本人と知り合えるチャンスにもなります。一般的なスキルであれば、Udemyなどのe-Learningを利用するのも効果的です。

 ただし、「学ぶこと自体が目的になってしまってはいけません。本を読んで満足するだけ、セミナーを次々に渡り歩くだけでは、残念ながら何も変わりません。行動が伴わなければ、それは自己満足にすぎず、成長にはつながらないのです。

 大切なのは、学んだことを試しに使ってみること。小さいことでもいいので、まずは自分の仕事や行動に取り入れてみましょう。失敗しても学びは残ります。インプットした知識を行動に移すことが、成長と成果へつながるのです。

(3)周囲の知恵を生かす

 「三人寄れば文殊の知恵」です。1人で悩んでいても解決策を見出せない場合は、他人に相談するのが効果的です。見落としていたことや、自分にはない知識や情報を教えてもらえることもあります。

 同僚や上司の知恵や経験を積極的に生かしましょう。また、周囲が自由に意見を言いやすい環境を作ることも大切です。チームでブレインストーミングを行う場合は、自分が最初にあえて思いっきりふざけたアイデアを出してみてください。日本人はグッドアイデアでないとダメだと思いがちです。どんなアイデアでも歓迎される空気が生まれると、他の人も発言しやすくなります。

 人の意見を引き出せる人は、結果的に自分の知識や視野も広がっていきます。遠慮や緊張感がある場では、意見も出にくくなり、少数の限られた視点に閉じてしまいがちです。だからこそ、まずは自分が場をほぐす役割を引き受け、学びの入り口を広げてみてください。

 さて、できなかったことを分析し、今後の改善策を見出せば終了というわけではありません。目標が未達で終わっているのであれば、「どうすれば遅れを取り戻せるか?」を考えることも重要です。足りない数字を補うための行動計画まで含めた分析を行う必要があります。

 KPIも定量的な数値として設定されているはずなので、ある期間の遅れをどこかで取り戻さなければ最終的なKGIは達成できません。できなかったことを正しく分析した後は、改善策に着手するのと同時に、遅れを取り戻す具体的な案を考えて行動していくことが大切です。

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