「Wi-Fiすらない」「PCを数人で共有」→DXをどう実現? 大川家具の担い手企業の「地道な一歩」(2/3 ページ)
家具の産地として知られる福岡県大川市。同市に拠点を置き、2024年の社長交代を機にDXの本格化が進んでいる企業の事例を紹介する。
東郷氏は就任後にPCやWi-Fiの導入など、基本的なところを整備した。また、クラウドソフトを導入し、手書きやオンプレミスのソフトによる従来の方法から切り替えた。例えば、契約書のやり取りにクラウドサイン、スケジュールの管理にはキントーンを活用している。タイムカードで管理していた従業員の勤怠管理もクラウドソフトに切り替えた。
浅川木工に限らず、地方の中小企業ではDXが遅れる事例は多い。情報がないか、従来通りの方法でやってこられたため改革のモチベーションが低いなど、理由はさまざまだ。上場企業であっても、経理関連の書類が紙のままだったり、勤怠表を従業員に手で書かせたりする事例がある。
ITツールの刷新で見えた課題
浅川木工の商流は全国にある地場の家具チェーンや家族経営店などの小売や卸である。手書きからクラウドでの管理に切り替えたことで一部の課題が明らかとなり、利益率の改善につながったという。
「システムを導入したことで一部商品の利益率が低いことが明らかになりました。在庫を抱えやすい商品も判明しました。従前も問題なく事業を展開できていましたが、昨今の原材料費高騰に対応すべく値上げを実施し、収益を改善しました」
格子柄の商品に独自性があるためか、値上げ実施後に売れ行きが低迷することはなかったようだ。業界では、製造業者がメーカー希望小売価格を提示しても、小売業者が独自に売価を決めた場合、メーカーはその3割の価格で納入する商習慣があったという。仮にメーカーが10万円の小売価格を想定しても、小売業者が7万円と提示した場合、メーカーはその3割にあたる2.1万円で卸すことになる。そうした商習慣にとらわれず、適正に対応できていると東郷氏は話す。
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