「Google一強」時代が終わる？ OpenAIのブラウザー「ChatGPT Atlas」の挑戦

[ロイター]

　米OpenAIは10月21日、ChatGPTを中心に設計されたAI搭載Webブラウザー「ChatGPT Atlas」（チャットジーピーティー・アトラス）を発表した。これは、Google Chromeの支配的地位に対する直接的な挑戦である。

　この発表は、週あたり8億人のアクティブユーザーを抱えるChatGPTの利用をさらに拡大するOpenAIの最新の動きだ。ブラウザー利用者の行動データを収集することで、オンライン体験のさらなる領域に進出しようとしている。

　これにより、AIが情報を統合して提示する「会話型検索」への移行が加速し、従来のキーワード検索を基盤とするグーグルの検索との競争が一段と激化する可能性がある。

　米Alphabetの株価は、同日午後の取引で1.8％下落した。

「Google一強」時代が終わる？　ブラウザー「ChatGPT Atlas」の挑戦

　ロイターは以前から、OpenAIが独自ブラウザーを立ち上げる計画を報じていた。AIブラウザー市場はすでに競争が激しく、Perplexity社の「Comet」（コメット）、Brave Software社の「Brave」（ブレイブ）、Opera社の「Neon」（ネオン）などが参入している。各社は、Webページ要約、フォーム自動入力、コード生成といったAIツールを組み込むことでユーザー獲得を狙っている。

　ChatGPT Atlasでは、ユーザーが任意のウィンドウでChatGPTのサイドバーを開き、コンテンツの要約、商品の比較、またはWebサイト上のデータ分析などを行うことができる。「エージェントモード」（Agent Mode）では、有料ユーザーがChatGPTにWebサイト上での操作を一任できる。これにより、旅行の調査から予約・購入までの一連の作業を自動で完結する。

提供：ロイター

　デモンストレーションでは、ChatGPTがオンラインレシピを検索し、必要な食材を自動で購入する様子を披露した。AIエージェントはインスタカート（Instacart）のサイトを開き、該当する食材をカートに追加するまでの一連の操作を数分で完了させた。

　このブラウザーは現在、米AppleのmacOS向けに世界同時リリースされている。Windows、iOS、Android向けのバージョンも今後公開される予定だ。

加熱するGoogle Vs. OpenAI　アナリストの見解は？

　サム・アルトマン氏の指揮のもと、OpenAIは2022年末のChatGPT公開によってテクノロジー業界に大きな衝撃を与えた。その後、同社はGoogleおよびスタートアップ企業の米Anthropicとの厳しい競争に直面しながらも、新たな成長分野を模索している。

　一方のGoogleは、ChatGPT登場以降に変化する検索行動に適応するための手段を開発してきた。検索結果ページには、従来のリンクに加えてAIによる要約を表示する「AI概要」（AI Overview）または「AIモード」（AI Mode）を導入し、チャットボットのような体験を提供している。さらに先月、Googleは自社のAIモデル「Gemini」を米国ユーザー向けChromeに統合し、今後iOS版Chromeアプリにも展開する計画を明らかにした。

　9月には、Googleに有利な判決も下された。連邦判事アミット・メータ氏は、GoogleがChromeブラウザーを売却する必要はないと判断し、検索エンジンのプロモーションのためにパートナー企業へ支払いを継続しても構わないと述べた。メータ氏は、ビッグテックやスタートアップによる生成AIへの巨額投資が既存の検索ビジネスを脅かしている現状を踏まえ、こうした支払いを容認する姿勢を示した。

　競争が激化する中でも、クロームは世界のブラウザ市場で71.9％のシェアを維持している（アクセス解析ツールを提供する、アイルランドのStatCounterの9月データによる）。それでもアナリストらは、OpenAIの新ブラウザーが広告市場に新たな競争をもたらす可能性があると指摘する。

　「ブラウザーにチャット機能を統合するのは、OpenAIが広告販売を開始する前段階と見られる。現在、OpenAIは広告を販売していないが、もし開始すれば、検索広告市場で約90％のシェアを持つGoogleの収益に大きな影響を与える可能性がある」と、米投資企業D.A. Davidsonのアナリスト、ギル・ルリア氏は述べた。