サントリーと経済同友会、「新浪問題」への対応から見えたそれぞれの「差」とは(2/4 ページ)
サントリーホールディングスの会長を務めていた新浪剛史の薬物疑惑は大きな波紋を呼んだ。この問題について、サントリーと経済同友会の差は非常に対照的だった。
新浪氏の発言に浮かんだ「疑問」
まず何より「適法な商品」をなぜ人に依頼し、輸入という形で入手したのか、という疑問が浮かびます。違法である可能性も否定できないから、回りくどい方法をとっていたのではないかとの疑惑を持たれて当然でしょう。
新浪氏はローソンの社長を務め、サントリーHDの社長を経て会長職にある、至って社会的地位の高い企業経営者でした。たとえわずかであっても違法リスクが存在するような行動をとること自体に、日本を代表する経営者として甚だしい自覚の欠如があったといわざるを得ません。
加えて、サントリーHDが実質解任を決めた決定的要因として、同HD自体がサプリメントを扱う企業であるという点があるでしょう。この点においても、同HDの事業をけん引する立場の経営者たる自覚のなさは、批判されてしかるべきです。窃盗を取り締まる立場の警察官が、私生活で万引きを疑われる行動をしていたような状況です。自己の置かれた立場を正しく認識できていないと思われる行動をとっていたわけであり、経営者の資質という点で明らかに失格であるといって良いでしょう。
新浪氏に関しては、もう一つの要職である経済同友会の代表幹事職について進退をどうするのか、という点にも注目が集まりました。
新浪氏はサントリーHDの会長職を辞した後、同友会代表幹事として会見して「私は法を犯しておらず、潔白だと思っている」と発言し、自らの進退の判断を同会のガバナンスに委ねるとしました。サントリーHDの会長は辞任したものの、同友会の代表幹事については即時辞任を否定したのです。
新浪氏はこれまで、政府の最低賃金1500円への引き上げ目標に関して「払わない経営者は失格」など、厳しい発言を幾度となくしてきました。それだけに、公職に固執するその姿勢からは、「他人に厳しく自分に甘い」という印象は拭えません。かつ、この引き際の悪さは、三大経済団体の代表という立場にあるという自覚が欠けている印象を与えました。
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