サントリーと経済同友会、「新浪問題」への対応から見えたそれぞれの「差」とは(4/4 ページ)
サントリーホールディングスの会長を務めていた新浪剛史の薬物疑惑は大きな波紋を呼んだ。この問題について、サントリーと経済同友会の差は非常に対照的だった。
「新浪事件」から得られる2つの教訓
サントリーHDの会長職を辞任後、週刊誌などで新浪氏のパワハラ、セクハラ報道も相次ぎました。報道自体は枝葉なものであったとしても、一連の新浪氏の行動および身の処し方から思うのは、昭和の企業常識にどっぷり浸かって育った昭和世代・オーバー還暦経営者の、時代遅れのコンプライアンス意識、ガバナンス意識の希薄さです。
筆者自身が新浪氏と同年代であることから、その行動特性や一つひとつの言動には同じ時代を過ごした“同胞感”を強く感じる部分もあります。「疑わしきはセーフ」という考え方、無理が通れば道理がひっこむ的な言動、最後は恫喝的発言で合意に持ち込もうとする――などの行動スタイルは、まさに昭和型経営者の典型的なものであると思うのです。
今回の新浪氏の件では、2つの教訓が得られたと感じています。1つは、昭和世代経営者をトップにいただく企業においては、トップの私生活を含めた行動リスクにも注意を払う必要があること。もう1つは、サントリーとは対極にある非オーナー系の合議制を旨とする組織においては、コンプライアンス・リスクやガバナンス・リスクの発生に際し迅速かつ適切な対応をするために、組織としての有事の行動基準策定などの備えが必要だということです。
昭和から平成を経て令和に至る時代の流れとともに、企業が直面するリスクは種類も内容も、あるいは顕在化時の対応策までもが時々刻々異なってきています。企業経営者や団体運営者は個人として日頃からその点を正しく認識し自らの襟を正すだけでなく、組織としては移り変わる時代の要請に応じたリスク対応策を適切に講じる必要があるでしょう。
著者プロフィール・大関暁夫(おおぜきあけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役
横浜銀行に入り現場および現場指導の他、新聞記者経験もある異色の銀行マンとして活躍。全銀協出向時はいわゆるMOF担として、現メガバンクトップなどと行動を共にして政官界との調整役を務めた。銀行では企画、営業企画部門を歴任し、06年支店長職をひと区切りとして円満退社した。その後は上場ベンチャー企業役員などとして活躍。現在は金融機関、上場企業、ベンチャー企業のアドバイザリーをする傍ら、出身の有名超進学校人脈や銀行時代の官民有力人脈を駆使した情報通企業アナリストとして、メディア執筆者やコメンテーターを務めている。
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