羽田近くの施設はガラガラ、成田の周辺は…… なぜ、空港近くの商業開発は失敗しがちなのか(3/3 ページ)
共生バンクが主導する成田空港周辺の開発プロジェクトが、うまくいっていないと報道されている。ここに限らず、羽田など空港周辺の開発は失敗することが多い。一体なぜなのか。
羽田近くにも「ガラガラ施設」が
2023年にオープンした「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」も、寂しいことになっている。羽田空港の旧ターミナル跡地に開業した施設で、商業施設やホテル、オフィス、研究開発施設などを含み、NTT東日本のオフィスや藤田医科大学の研究施設がある。
ただ、オフィスやホテルなどは失敗しているわけではない。京急 EXイン 羽田は週末で1人1泊2万円以上、ホテルメトロポリタン 羽田は3万〜4万円台が相場だ。ホテルは空港利用客が見込まれ、オフィスは品川から最短20分という好条件が強みになる
一方、商業施設は閑散としている。モールのように人の流れがあるわけではなく、人が点在しているような状況だ。週末でも飲食店に人が入らないような状況で、報道によると商業テナントの稼働率は65%だという。施設全体が12棟に分かれており、見た目は商業施設よりも研究所に近い。雰囲気からして商業施設の様相ではない。
大田区によると、2024年度の来訪者数は7、9、2月のみ前年同月を上回ったものの、年度全体では前年割れとなった。集客力のある施設はライブハウス「Zepp Haneda」くらいで、イベントに左右されている状況だ。施設全体に都内の観光地ほどの魅力があるとは思えず、レラと同様の事例といえる。
空港近くで成功した施設は、ほとんどない
千歳アウトレットモール・レラや羽田イノベーションシティの事例をふまえると、仮にGATEWAY NARITAが竣工しても厳しい状況に追い込まれそうだ。商業施設の店舗数は公開していないが、成田空港から離れている上に最寄り駅もないため、新千歳や羽田の事例よりもさらに不利である。客席数5000席超を擁するアリーナの規模感は約3000人のZepp Hanedaに近いが、都心から離れている点がネックである。
反対に空港付近で成功している商業施設としては、関空近くの「りんくうプレミアム・アウトレット」が挙げられる。中国人観光客にも人気の施設だが、同施設は空港至近なだけでなく、大阪〜和歌山の動線上にあり、両地域の住民のレジャーの場になっている。周辺は市街地で、原野が広がる成田とは対照的だ。
共生バンクは現在も2027年冬の開業に向けて動いている。予定通り建設が進むのか、それとも中断になるのか。開業した場合でも、数多くの課題が現れることになるだろう。
著者プロフィール
山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。 X:@shin_yamaguchi_
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